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TFT液晶のアクティブマトリックスとは?TFT種類は?

TFT

液晶ディスプレイがテレビやパソコン、スマホに広く利用されています。それらの液晶の種類としては、IPS、VA、TNなどの用語を聞くことが多いですが、TFT液晶という用語を聞くこともあります。

TFT液晶とは何でしょうか?以下に紹介します。

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TFT液晶とは?

TFTとは薄膜トランジスタ Thin Film Transistor の略号で、TFTを搭載した液晶ディスプレイのことをTFT液晶と呼んでいます。

液晶の種類としてよく聞くIPS、VA、TNとは、「液晶モード」から見た液晶のタイプのことです。IPS、VA、TNでそれぞれ異なるタイプの液晶分子を使用しており、それらの分子の空間的な配列や電圧をON/OFFした時に動きも異なります。

つまり、液晶モードからの分類と観点が異なっており、IPSモードのTFT液晶ということもあり得るわけです。

実際、最新の高精細なテレビやパソコン、スマホに搭載されている液晶のモードは、IPS、VA、TNであり、TFT液晶でもあります。

TFTはスイッチング素子で、その機能については次項で解説します。

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TFT液晶のアクティブマトリックスとは?

液晶ディスプレイは、「ドットマトリックス方式」のディスプレイで、多くの画素から形成されています。それぞれの画素の明暗を調節して画像を表示する仕組みです。

パッシブマトリックス方式

「ドットマトリックス方式」のディスプレイには、パッシブマトリックス駆動のものがあります。行方向と列方向に電極を配置し、「〇行▽列」の画素を制御するために対応する電極に電圧を印加します。

この方法は、画素数が少なく、高速の動画表示をしない場合は良いのですが、テレビのよう毎秒60コマ以上の高精細な画像を表示をしようとすると無理があります。所定の時間内に順次画素を走査して画像を作りますので、1画素に電圧をかけていられる時間が短くなり、コントラストが低下してしまうためです。

アクティブマトリックス方式

パッシブマトリックス駆動の弱点を克服するために生まれたのがアクティブマトリックス駆動で、各画素にTFTを設置します。

このTFTがスイッチング素子として機能し、各画素を走査する際の電圧印加時間が短くなっても、より長い時間画素に電圧が印加されるように制御できます。

TFTを使ったアクティブマトリックス駆動により、フルハイビジョン、4K、8Kなどの高精細なディスプレイによる動画表示が可能になるわけです。

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液晶のTFTの種類は?a-Si、LTPS、IGZO

テレビやパソコン、スマホなどに使用されている液晶ディスプレイのTFTは、アモルファスシリコン(a-Si)、低温ポリシリコン(LTPS)、酸化物半導体(その内の主要なものがIGZO)です。

アモルファスシリコン(a-Si)

アモルファスシリコン(a-Si)は、電子移動度が<1 cm2/Vsと低いですが、リーク電流は少なく、もっとも量産性優れています。そのため、大型のテレビ用液晶などは主にa-Si TFTを使っています。

低温ポリシリコン(LTPS)

低温ポリシリコン(LTPS)は、電子移動度が30-100 cm2/Vsと高いですが、リーク電流は多く、均一で大型の液晶パネルを作るのは難しいという特徴があります。そのため、主にスマホ用などの中小型液晶に使用されています。

酸化物半導体(主にIGZO)

酸化物半導体(主にIGZO)は、電子移動度が10-30 cm2/Vsとa-Siよりは高く、LTPSよりは低いですが、リーク電流は非常に少なく、大型の液晶パネルにも適用できるポテンシャルはあります。しかし、現状では中小型の液晶を中心に製品化されています。

IGZOとは、インジウム (Indium) 、ガリウム (Gallium) 、亜鉛 (Zinc) の酸化物InGaZnOのことで、「イグゾー」と呼ばれています。IGZOを液晶や有機ELのTFTとして用いた場合、a-Siの20~50倍の電子移動度を発揮します。LTPSはIGZOよりもさらに高い電子移動を発揮しますが、IGZOの方が格段にリーク電流が少ない(LTPSの1000分の1)という特徴があります。またLTPSよりもIGZOの方が大型のディスプレイに適用しやすいと言われています。

シャープが2012年4月に、世界で初めてIGZOのTFTを搭載した液晶ディスプレイの量産を開始しました。現在では、SamsungやLGもIGZOを搭載した液晶・有機ELディスプレイを量産しています。1社だけの特別な技術ではなく、普及期を迎えています。

TFTは液晶だけでなく、有機ELにも利用されます。有機ELではフレキシブルなポリイミド基板などが導入され始めていますが、その際に重要となるのがTFTを基板に形成するためのプロセス温度です。

フレキシブル有機ELとTFT

有機ELは、多数の画素を配列し、それらを適宜発光させて画像を表示する「ドットマトリックス」型のディスプレイです。列方向と行方向に電極を配置し、それらを使って順次画素に電圧を印加して発光させていく「パッシブマトリックス駆動」の有機ELも初期の頃は作られましたが、現在のように高精細な動画表示をするためには「アクティブマトリックス駆動」にする必要があります。

アクティブマトリックス駆動では、各画素にTFTの回路を形成します。有機ELの場合は、一つの画素に対し、選択用TFTと駆動用TFTの合計2つが必要です。選択用TFTのスイッチング動作によりコンデンサーに画素データを書き込み、その電圧に応じて駆動用TFTにより有機ELに電流を流して発光させます。

フレキシブル有機ELとTFT材料

TFT材料としては、一般にアモルファスシリコン(a-Si)や低温多結晶シリコン(LTPS)などのSi系TFT,In-Ga-Zn-O(IGZO)などの金属酸化物半導体を用いた酸化物TFT,有機半導体を用いた有機TFTなどがあります。

有機ELのディスプレイでは、駆動用TFTに高い移動度が必要で、また選択用TFTについても高速のスイッチングが要求されます。そのため、大型の液晶ディスプレイで主流のアモルファスシリコンでは移動度の点で性能を満足できません。

LTPSは、100cm2/Vs以上の高い移動度が可能ですが、TFTを形成するためのプロセス温度が高く、使用できるフレキシブル基板が限られます。またエキシマレーザーを用いたアニールが必要で、50インチ以上の大型の有機ELに適用することが難しいです。

有機TFTは、移動度が低かったのですが、研究開発により10cm2/Vs以上のものが報告されるようになり、期待されます。有機TFTは湿式のプロセスが可能で、プロセス温度も100~150℃まで下げられるため、フレキシブル基板の選択肢も広がります。現状では信頼性等に課題があります。

酸化物TFTは、り10cm2/Vs以上の移動度があり、スパッタにより形成できるため、プロセス温度を300~400℃まで下げることができ、もっとも注目されているTFTです。リーク電流が低く、低消費電力化が可能です。

SamsungはLTPS、LGは酸化物のTFTのフレキシブル有機ELを国際会議等で発表しています。

フレキシブル有機ELのTFTプロセスと基板材料

フレキシブル有機ELのTFTプロセスの温度により、基板に要求される耐熱温度が決まります。

LTPSでは、プロセス温度が500℃程度であり、ポリイミド以外に選択肢はないでしょう。またTFTの品質はプロセス温度を高くするほど良くなる傾向があり、ポリイミドの中でも特に耐熱性に優れるものを使用してギリギリという状況です。そのため、さらに耐熱性の高いポリイミドが求められています。また室温からプロセス温度まで昇温し、プロセス後に室温まで下げる必要がありますので、線膨張係数も小さなものが求められ、その点でもポリイミドが優れています。

酸化物は、プロセス温度が300-400℃ですが、ポリイミド以外に選択肢はないでしょう。ポリイミドは耐熱性を高めるほど着色する傾向があります。ボトムエミッション方式が用いるには基板が透明である必要があるため、プロセス温度を少しでも下げられると有利です。

有機EL基板用ポリイミドフィルムのメーカーは?

有機ELパネルの分野では、スマホ用はSamsung、テレビ用はLGが圧倒的に大きなシェアを持っています。日本ではJOLEDが事業化を目指していますが、まだ大きなシェアを穫れる見通しは立っておりません。今後は中国メーカーの存在感が増してくるでしょう。

このように有機ELのパネル事業では海外メーカーが主役ですが、基板用のポリイミドフィルムにおいては、そのほとんどを日本メーカーが供給しています。ポリイミドは、1960年代初めに米国Du Pont社で航空宇宙産業用として開発されたことが始まりです。その後、多くの日本の化学メーカーが開発に取り組み、1980年代初めには現在有機EL基板用に使用されるようなポリイミドが開発されています。

ポリイミドは高性能部材に用いる高価なポリマーで、これまでは年間の販売数量がそれほど伸びず、事業としては各社苦心していたようですが、粘り強く事業を続けてきました。その結果、有機EL基板としての用途が花開き、事業として急成長することとなりました。投資効率を重視する欧米の化学メーカーは、開発後のある程度の期間に投資を回収し、さらに売上・利益を伸ばせる見通しが立たなければすぐに撤退してしまうことが多いですが、「粘り強く事業を続ける」という点は、これまでの日本メーカーの強みなのかもしれません。しかし、メーカーから見れば、いつ事業として花開くのかが分からないまま数十年も続けることになるので、事業の選択と集中、経営効率という観点では悩ましい問題でもあります。

このような事業の難しさ故に、現在有機EL基板としてポリイミドフィルムを供給しているのはほとんどが日本メーカーです。具体的には、Samsungと宇部興産の合弁会社であるSUマテリアルスがSamsungにポリイミドを供給していますし、カネカがLGにポリイミドを供給しています。

これらのポリイミドも有機EL基板用として考えた場合、必ずしも完璧な性能ということでもないようで、東洋紡、東レ・デュポン、三菱ガス化学などもそれぞれの製品の特徴をアピールして事業拡大を狙っています。

また最近は韓国のSKCコーロンPIも有機EL基板用ポリイミドの事業を伸ばしていると報じられており、さらに競争が激化しそうです。

有機EL基板用ポリイミドフィルムの特徴は?

有機EL基板用途で重要なポリイミドの特徴は以下のような点です。

1.ポリマー(高分子)の中で最高レベルの耐熱性を有すること。
2.ポリマーの中で最高レベルの高強度を有すること。
3.極めて小さな線膨張係数を有すること。
4.ガラス基板より軽量であること。

有機ELパネルの製造では、有機EL基板にTFT(薄膜トランジスタ)を形成するプロセスがあります。この工程でポリイミド基板を高温下におくことになります。通常のTFTでは500℃前後のプロセス温度となるようで、温度を高くするほどより高性能なTFFが形成可能です。そのような観点では、ポリイミドでも耐熱温度的にはギリギリの特性で、少しでも耐熱性に優れるポリイミドが求められています。

また室温から約500℃まで昇温し、TFT工程を経た後に室温まで温度を下げることを考えると、通常のポリマーであれば熱膨張により大きく体積が変化します。TFTなどの微細加工をする際にはこの熱膨張が難題で、温度変化による体積変化が小さい材料が望ましいことになります。一般的には線膨張係数という数値でこの特性を表しますが、ポリイミドは極めて線膨張係数が小さく、温度による体積変化が小さいことが知られています。

東洋紡の「ゼノマックス®」は、室温から500℃まで熱膨張係数が約3ppm/℃と一定で、ポリマーフィルムとして世界最高レベルの寸法安定性を有し、400~500℃の高温下で加工が必要なTFTの回路基板向けに使用することができることから、今後の伸びが期待されています。

有機ELの特徴として、画面を曲げたり、巻き取ったりできることが挙げられます。その特徴はポリイミド基板を採用することでさらに向上します。何度も曲げたり、巻き取ったりするためには、ポリイミドの最高レベルの強度が魅力なわけです。

スマホなどのモバイル機器では軽量という特徴は大きいですし、また大画面になると基板も大きくなるのでガラス基板との差が大きくなるでしょう。

有機EL基板用ポリイミドフィルムとトップエミッションおよびボトムエミッション

前項で述べたポリイミドの重要な特性である「耐熱性」については、その化学構造と密接な関係があります。これまでの研究から、耐熱性を高くするほど透明性が下がり、着色してしまう傾向があることが知られています。その理由を科学的に説明するには、化学構造から説明しないといけませんのでここでは割愛します。

ここで紹介したいのは、「ポリイミドフィルムは透明でなければいけないのか?それとも着色していても良いのか?」という点です。その答えは、「使用する有機ELの方式がトップエミッション方式なのか、ボトムエミッション方式なのかによる」ということです。

有機ELには、その構造からトップエミッション方式とボトムエミッション方式があります。トップエミッション方式は、基板を通過せずに光を取り出すことができますので、ポリイミド基板が着色していても使用できます。ボトムエミッション方式では、基板を通過させて光を取り出すので、着色していると光のロスが大きくなり、透明なものが求められます。

トップエミッション方式の方がボトムエミッション方式よりも高画質が得られるのですが、製造の難易度が高く、スマホ用などの小型の有機ELしか安定的に製造できていません。大型有機ELテレビなどはボトムエミッション方式で製造されています。

まとめ

液晶のTFTとアクティブマトリックス駆動、有機EL基板用のポリイミドフィルムのメーカーとその特徴などについて紹介しました。
ここでは単純にポリイミドフィルムと表現していますが、ポリイミドは耐熱性が高いために成形加工が難しく、必ずしもフィルムの形状で供給するとは限りません。ワニスというポリイミドの前駆体の溶液を、パネルメーカーの工程で基材に広げ、高温で処理してイミド化反応を進め、溶媒を除去してフィルム化する場合もあります。そんなパネルメーカーの工程中で使いやすくすることで生産効率を向上させるなどの工夫も、日本メーカーが得意とするところです。

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