Samsung Displayが開発した最先端のディスプレイパネルであるQD-OLEDパネル。これを搭載したテレビが日本ではソニーから2022年に発売されました。
そして2023年にシャープからもQD-OLEDパネルを搭載したテレビが発売されました。
いずれも有機ELテレビのフラッグシップモデルに位置付けられ、現在販売されているテレビの中では最高画質と考えられています。
QD-OLEDと有機EL(OLED)の違いも気になります。さらにQD-OLEDの焼き付きや寿命についても知りたいですね。
以下に解説します。
型落ちになった2022年モデルのA95Kが安くなっています!
後継機種の2024年モデルA95Lも魅力的です!
有機ELテレビと液晶テレビのどっちを選ぶべきかについてこちらの記事で紹介しています。
QD-OLEDは焼き付きは大丈夫?寿命は?
QD-OLEDパネルは、最先端の有機ELディスプレイパネルであるだけに、焼き付きなどの耐久性・寿命も気になりますね。それらを説明するために、まず簡単にQD-OLEDパネルの構造について紹介します。
QD-OLEDパネルの構造
QD-OLEDは、青色OLEDパネルの前面側の赤色と緑色のサブピクセルの位置に、青色光を吸収してそれぞれ赤色光と緑色光を放出する量子ドットを配置する構造となっています。
これは韓国Samsung Displayが開発し、日本ではソニーとシャープが供給を受け、大型テレビとして販売しています。
同じSamsung Displayが開発したスマホ用の有機ELパネルの場合、蒸着により赤色・緑色・青色(RGB)のサブピクセルに有機化合物の発光材料を塗布しています。この工程でFine Metal Mask (FMM)というサブピクセルの位置に微小な開口部があるマスクを使用します。
しかし、大型テレビでは、FMMの温度膨張などにより、同様な方法でRGBサブピクセルの塗り分けが難しくなり、開発が中止されました。
そして多大な研究開発努力により生み出されたのが、このQD-OLEDです。この構造ならば、青色のみのOLEDパネルを作製し、その前面に量子ドットを印刷していけばよいため、従来の課題を回避することができました。
QD-OLEDの焼き付きは大丈夫なのか?
QD-OLEDは、従来の有機EL(OLED)と同様に、焼き付きのリスクがあります。例えば、ソニーのA95Kの取扱説明書にも、焼き付きが発生することがあり、それは故障ではないと記載されています。
もちろんソニーに限らず、現状のQD-OLEDパネルを搭載した製品であれば、焼き付きのリスクはあります。
焼き付きは、特定の画素部分の明るさなどが他の画素よりも暗くなる現象で、その部分の発光材料が劣化することにより発生します。
QD-OLEDは、前述のような構造であるため、青色OLEDパネルの特定の画素の劣化と、前面に配置された赤色と緑色の量子ドットの劣化のリスクがあります。
量子ドットのみが劣化した画素は、青色光から赤色あるいは緑色に変換する機能が損なわれ、青色光が漏れてくるようになると考えられ、該当画素の色が青色方向にずれる可能性があります。
これを焼き付きと言ってよいのかよくわかりません。つまり、そのような可能性があるというだけで、実際のそのような事例が注目される段階に至っていないため、呼称も定まっていません。
製品として発売する前に、通常の耐久試験はクリアしているはずですし、ピクセルシフトなどの焼き付きを防ぐための機能が搭載されていますので、通常の使い方であればすぐに焼き付く可能性は低いと考えられます。
販売台数が増えるほど、いろいろな使われ方をします。多くのユーザーの実使用環境下でどのぐらいの頻度で焼き付きが起こるのかについては、まだ販売が始まってそれほど時間が経っていない機種ですので、メーカーとしても修理対応をしながらこれからデータを蓄積する段階でしょう。
QD-OLEDの寿命は?
焼き付きは、画面内の特定の画素が周囲の画素に比べて暗くなるなどする現象を指します。寿命は、通常は画面全体の明るさが初期に比べてある程度以下に暗くなるまでの使用時間で表されることが多いです。
ブラウン管のテレビも使い続けると、徐々に画面が暗くなり、色の鮮やかさが失われていきました。これはブラウン管内の蛍光体の劣化が原因の1つです。
QD-OLEDの場合、青色OLEDパネルの寿命と量子ドットの寿命がパネルの寿命に影響するはずですが、それぞれの寿命あるいはパネル寿命について公式発表を確認できていません。
OLEDパネルについては、従来のOLEDパネルと同程度の寿命と考えて良いかもしれません。その場合、約3万時間とされていますので、通常の使い方をするならば十分な耐久性はあると考えてよいでしょう。
QD-OLEDのメリットとデメリット
新方式のQD-OLEDパネルを搭載したテレビのメリットとデメリットについて解説します。
QD-OLEDのメリット
【広色域】
QD-OLEDの最大のメリットは、広色域であることです。青色のOLEDに量子ドットを組み合わせた構造であることからも、広色域化を狙った新方式のパネルであることがわかります。
ディスプレイの色域は、一般に色度図上の領域で表されます。
ところが年々ディスプレイの広色域化が進んできたため、このような1つの平面内の領域表示では不十分であることが広く知られるようになってきました。なぜなら、輝度(ディスプレイの明るさ)によって色域が異なるためです。
そのため、最近は、色域を表す平面の垂直方向に輝度軸を追加し、3次元の領域で表現することが多くなり、これをColor Volumeと呼んでいます。
このような色域空間で比較すると、QD-OLEDが特に高輝度領域での色域が広く、優れていることが知られるようになってきました。
【高輝度】
従来の有機ELテレビに比べて、高輝度であることをSamsung Displayがアピールしています。これと前述の高輝度領域の色域の広さにより、従来のディスプレイとは一見して違いが分かるようにな映像を表示できます。
QD-OLEDのデメリット
【高価】
新方式のディスプレイパネルであり、まだまだ生産量も少ないため、かなり高価です。それでもSmasung Displayは赤字で販売しているようなので、当面はあまり価格は下がらないでしょう。
【黒浮き】
ディスプレイパネル前面に量子ドットを配置していますので、外から青色光が照射しても量子ドットが発光します。
もちろんその影響を最小限に抑える工夫がされていますが、画面を消した状態で、明るい部屋で比較的強い光が当たる状況ではわずかに黒浮きしていることがわかります。
QD-OLEDテレビの比較
2023年12月19日時点で、日本国内ではソニーとシャープからQD-OLEDテレビが発売されています!これらについて紹介します!
QD-OLEDテレビ!ソニーブラビアA95K
日本で始めて発売されたQD-OLEDパネルを搭載したテレビが、ソニー(SONY)のA95Kシリーズで、2022年に登場しました。
ソニーが誇る有機ELテレビのラインアップの中でフラッグシップモデルと位置付けされているのがこのA95Kシリーズです。
それだけに有機ELテレビとしての画質・機能は、最高峰です。
従来のカラーフィルター方式の有機ELテレビと比べて、広色域・高輝度が実現されています。
色域というと2次元の色度図上で、表示可能な色の範囲を領域で示したものがよく用いられます。ところが、より正確な話としては、この領域もディスプレイの輝度(明るさ)で変化してしまいます。
ほとんどのメーカーの説明では、おそらくその製品でもっとも色域が広くなる輝度でのデータを記載しているでしょう。
特に高輝度での色域がQD-OLEDの方が従来の有機ELよりも優れています。そのため光輝く、色鮮やかな映像ほど、QD-OLEDの方が美しく表示される傾向があります。
残念なのは、2023年の最新のQD-OLEDパネルを搭載したテレビA95Lシリーズが、米国では発売されていますが、日本では発売されず、2023年12月20日時点でもA95Kが最新機種として販売されていることです。
それでもソニーの有機ELテレビのフラッグシップですので、トップレベルの画質・機能であることは間違いありません。むしろ価格が下がってお買い得感がありますね!
特にソニーが力を入れている認知特性プロセッサー「XR」については、効果抜群です!いろんな映像を自然な美しさで描き出します!
ソニーブラビアA95L
前述のソニーブラビアA95Kの後継機種がA95Lです!
A95K発売時点では、日本国内でソニーのみがQD-OLED搭載テレビを発売する状況であったため、独走状態でした。
しかし、その後、シャープがSamsung Displayが開発した新世代のQD-OLEDパネルを搭載したテレビを発売したので、ソニーの後継機種を待ち望むファンも少なくなかったはずです。
A95Lは、海外では先行して販売されていたのですが、ようやく日本でも発売されました!
正直なところ、2024年10月23日時点ではかなり高価で、型落ちになって安くなっているA95Kの方に魅力を感じる人も多いでしょう。
シャープAQUOS QD-OLED FS1とGS1
ソニーに続いて日本でシャープが、2023年にQD-OLEDパネルを搭載した有機ELテレビAQUOS QD-OLED FS1を発売しました。
シャープのFS1の強みは、何と言っても第2世代QD-OLEDパネルが搭載されていることです。ディスプレイパネルそのものが新しくなっているので、ソニーのA95Kに比べてその点では有利です。
最新のQD-OLEDパネルを搭載することで、強烈に色鮮やかな有機ELテレビに仕上がっています。
そしてシャープは2024年モデルでも有機ELテレビAQUOS QD-OLED GS1を発売し、さらに性能を向上させています!
最新の第3世代QD-OLEDパネルを搭載していますので、基本性能が上がっていることは納得ですね。
新しい方式のテレビは、最初は荒削りな部分がありますが、モデルチェンジを繰り返しながら完成度が高まっていくことがよくあります。
このQD-OLEDパネル搭載モデルも、どんどん磨きをかけられている感じですね!
QD-OLEDテレビの価格について
日本のテレビ市場では、ソニーとシャープからQD-OLEDパネル搭載の有機ELテレビが発売されていますが、前述の通り、QD-OLEDパネルはSamsung Displayから供給されています。
某調査会社のレポートによれば、Samsung DisplayはQD-OLEDパネルを採算が取れない価格で出荷しているようです。
新しい方式のディスプレイパネル事業を立ち上げた場合、初期には赤字となることは珍しくありません。研究開発投資が先行しますし、できるだけ大量に生産しないと量産効果もでてきませんので、苦しい時期が続きます。
優れた性能であっても高価ですので、販売シェアは少なく、プレミアム価格帯の高級機種にターゲットを絞らざるを得ません。したがって、Samsung Displayも継続できるレベルの赤字額に収めなければならず、急激に生産量を増やすことはなさそうです。
このような状況から、当面はQD-OLED搭載テレビの価格はあまり下がらないと予想します。それでも後継機種が発売されれば、型落ちになる旧機種は在庫処分で安くなりますので狙い目です!
有機ELテレビと液晶テレビのどっちを選ぶべきかについてこちらの記事で紹介しています。
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