PR

大学の研究費は産学連携でどれくらいなのか?特許収入は?

大学の研究力

国立大学の運営費交付金の削減が続き、理工系の大学の研究基盤が脆弱になっていることを多くのノーベル賞受賞者などが訴えています。大学で研究を継続するためには、外部から研究費を獲得しなければなりません。産学連携による研究費や特許収入はどれぐらいなのでしょうか?

スポンサーリンク

大学の研究費は産学連携でどれくらいなのか?

国立大学の運営費交付金が削減され続け、理工系の大学の研究基盤に深刻な影響を与えていることは、こちらの記事「国立大学運営費交付金の削減が続く!日本の研究開発力は?」で紹介しています。日本政府は、運営費交付金の削減とは反対に、「未来投資戦略2017」(平成29年6月閣議決定)において、平成26年比で平成37年までに企業から大学等への投資を3倍増とすることを政府目標としています。

企業が大学へ投資するわけですので、その金額を日本政府が目標設定することに若干の違和感がありますが、ビジネスにおいて客がお金を払うのに企業が売上目標をかかげることと同様と考えればある程度納得できるのかもしれません。

つまり、大学とは社会の中では「学校」という「公的な位置付け」の組織ですが、それらを所轄する政府(文部科学省)が主導して改革を進め、大学が努力して産業界からお金を獲得できるようにするという意味と理解すれば良いでしょう。

実際、国立大学の運営費交付金が削減されておりますし、私立大学はそもそも国からの交付金が少ないため、予算面では厳しい状況です。したがって、ほぼすべての大学で外部資金の獲得を努力しなければいけない状況です。

文部科学省の「平成28年度 大学等における産学連携等実施状況について」によれば、「平成28年度における民間企業からの研究資金等の受入額(共同研究・受託研究・治験等・知的財産権等収入額)は約848億円と、前年度と比べて約83億円増加(10.9%増)し、本調査開始後(平成15年度以降)、初めて800億円を超えた。」とのことです。平成23年度の約589億円から毎年少しずつですが増加し続けています。

主に共同研究費の割合が大きく、平成23年度の約334億円から平成28年度の約526億円まで増加しています。

スポンサーリンク

大学の研究費の産学連携ランキングは?

民間企業との共同研究・受託研究の研究費受入額の大学別ランキングは以下の通りです(*平成28年度実績)。

第1位 東京大学  約60億円
第2位 京都大学  約49億円
第3位 大阪大学  約44億円
第4位 東北大学  約33億円
第5位 慶應義塾大学  約28億円
第6位 名古屋大学 約25億円
第7位 九州大学  約24億円
第8位 東京工業大学  約18億円
第9位 早稲田大学  約12億円
第10位 北海道大学  約12億円

上位10大学で合計約305億円ですので、平成28年度の共同研究と受託研究の研究費総額約640億円の内の約48%に相当します。本調査では995校の大学を調査していますので、産学連携で共同研究・受託研究費を獲得できる大学は上位の一握りの大学に限られていることが分かるでしょう。

大学によってルールが異なりますが、獲得した研究費の10~15%程度を間接経費として大学の取り分とするのが一般的です。これは大学の貴重な収入になるので、大学は教員に外部資金を獲得するように指示します。

しかし、これらの研究費受入額は十分と言えるでしょうか?実際のところ不十分ですし、政府も前述のようにもっと高い目標を設定しています。

それはもう少し詳しく見てみるとその一端が分かるでしょう。例えば、獲得額1位の東京大学は、共同研究と受託研究の件数でみると1,706件です。企業からそれなりの金額を受領するためには、当然のことながら契約書を交わします。そうなると弁護士の力を借りることも必要ですし、それらをサポートする事務スタッフも必要です。そして上記の件数の対応をするとなると何人のサポートスタッフが必要でしょうか?

それを例えば約60億円の15%の9億円の間接経費で賄おうとすると、それほど簡単ではないでしょう。もう少し少ない金額の方がイメージしやすいかもしれません。第10位の北海道大学では、15%は1.8億円です。弁護士を専任とするのか外部委託とするのかにもよりますが、それなりの費用が掛かるでしょう。またTLOの責任者は、有名企業の知財部長レベルの人を採用することが多く、給与もそれ相応の金額です。雇用すれば給与だけではなく、社会保険や場所、設備に関する費用も必要です。さらに数人のスタッフをそろえれば、それなりの経費となるでしょう。

スポンサーリンク

大学の特許収入はどれぐらいなのか?

大学では、獲得した研究費は研究活動で基本的には使います。研究活動による成果物として特許を出願し、その実施料収入に多くの期待を抱きます。特許権の実施等収入の平成28年度のランキングは以下の通りです。

第1位 東京大学  約7.2億円
第2位 京都大学  約4.6億円
第3位 日本大学  約1.2億円
第4位 大阪大学  約1.2億円
第5位 東北大学  約1.1億円

特許権保有件数のうちの実施許諾中の特許権数の割合は、東京大学で34.4%で第4位、京都大学で31%で第6位です。

一般の人の中には、「特許を取れば儲かる!」とお考えの方も多いようですが、そもそもは特許を取得し、それを実施して製品を販売して利益を得るものですので、大学のように特許を取得しながらも、自ら製造・販売をしない場合は利益に結び付かないことの方が多いです。

また特許も出願費用から特許化する費用、さらに維持する費用がかかり、特に国際出願すると多額の費用がかかります。契約によって、これらの特許に関する費用を企業側にすべて負担してもらうこともありますが、大学単独で負担すると高い確率で赤字になります。

したがって、上記の特許の実施料収入だけではなく、それに要する経費を差し引いた上で、どの程度の利益を得ているのかが重要となります。

前述の研究費の獲得額と合わせて、これらの産学連携の活動全体で黒字化するには、ある程度の規模が必要となるでしょう。

まとめ

日本の大学の産学連携による研究費や特許収入について紹介しました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました