最近は家電量販店のテレビ売り場に行くと、大型で美しい映像を表示できる高画質のテレビが多数並べれられています。特にハイエンドの価格帯のテレビを見て画質が低いと感じる方はほとんどいないでしょう。
ところでテレビを含むディスプレイの「画質」とはどのような要素によって決まるのでしょうか?以下に紹介します。
有機ELテレビと液晶テレビのどっちを選ぶべきかについてこちらの記事で紹介しています。
ディスプレイの画質を決める要素は?
究極のディスプレイとはどのようなものでしょうか?理想としては、実物が目の前にあるように、リアルに表示できるディスプレイが究極のディスプレイと言って良いでしょう。
直近の30年程度の間に、ディスプレイの画質は大きく進歩しました。現在(2024年10月時点)、販売されているハイエンドの大型テレビを基準に考えてみると、「実物が目の前にあるように」という点において大きく隔たりがあるのは、立体(3D)表示ではないことです。
近年、一時期、3D表示が可能なテレビが販売されましたが、専用の眼鏡が必要であったり、視差を利用して立体に見せているだけで、実際と同じような3Dではないなどの性能的な制限があることなどから、廃れてしまいました。
現時点で販売されているほとんどのテレビには3D機能は搭載されていません。ホログラムやライトフィールド方式の試作品はいくつかのメーカーから発表されていますが、画質面でまだ十分ではなく、製品化されていないようです。
むしろ2Dの8Kテレビの方が、立体感が感じられるなどの感想を聞く機会が多いです。したがって、本格的な3D表示についてはまだまだ発展途上であり、現時点では2Dの画像表示がかなり高いレベルにあると考えて良いでしょう。
それでは2D表示に限定した場合、「実物が目の前にあるように」感じられる画質の要素とは何でしょうか?
一般に「解像度」「ビット深度(階調性)」「フレームレート」「色域」「輝度(ダイナミックレンジ)」の5つの要素で画質が決まります。これらについてさらに詳しく解説します。
ディスプレイの解像度とは?
ディスプレイの解像度とは、表示画面を構成する画素の数のことです。
テレビやパソコンのモニターなどのディスプレイは、多くの画素が規則正しく配列しており、これらを適切に点灯・消灯・明るさ調整することで画像を表示しています。画素の数が多くなるほどきめ細かな映像を表示することができます。
テレビの場合は、放送波を受信して表示するために、解像度が映像信号の規格に適合するようになっています。そのためテレビごとにバラバラではなく、フルハイビジョンの解像度1920×1080=2,073,600、4Kの解像度3840×2160=8,294,400、8Kの解像度7680×4320=33,177,600となっています。
地上波デジタル放送が始まり、ブラウン管のテレビからフルハイビジョンのテレビに変わった時は、美しい画質に感動しましたが、4K/8K放送をはそれを上回る美しさです。
このように解像度が増え、きめ細やかな映像になるとその違いが多くの人に認識されます。重要な画質を極める要素であることがわかります。
「実物が目の前にあるように」という点では、解像度と合わせてディスプレイのサイズと視聴距離ということも関わってきます。同じ解像度ならば、ディスプレイのサイズが小さい方が画素と画素の間隔が狭くなりますので、よりきめ細やかな映像となります。
また小さなものを見る時に近づいて見た方が識別しやすいことから、離れて視聴するほど画素の粗さが分かり難くなります。
フルハイビジョンの32インチのテレビを普通の距離で見てもかなりキレイに見えますが、42インチ以上のフルハイビジョンのテレビを近くで見るとかなり画素の粗さを感じることができるでしょう。42インチ以上ならば4Kテレビがおすすめです。
また4Kテレビでも、地デジ放送を視聴する場合は、もともとの映像信号がフルハイビジョンですので、4Kの解像度に高めるアップコンバート機能が重要となってきます。8Kテレビで地デジ放送を視聴する場合も同様です。
4Kアップコンバート機能で評判が良いテレビはレグザです!
関連記事:4Kへのアップコンバートとは?テレビとレコーダーどっちでやれば良い?
ディスプレイのビット深度(階調性)とは
ディスプレイの画質の重要な要素の1つに「ビット深度(階調性)」があります。これは明るさ・色の変化をどれだけきめ細かく表示できるかを表す指標です。
例えば日の出の画像などでは、非常に明るい太陽から空の上の方の空の色、さらに下方の影になっている暗い部分まで、きれいなグラデーションで明るさ・色が変わっていきます。
これをビット深度(階調性)が低いディスプレイと高いディスプレイで表示してみると一目瞭然です。ビット深度が低いとグラーデーションが滑らかでなく、帯状になります。ビット深度が高いと滑らかなグラデーションとなります。
8ビットは、2の8乗で256段階の階調が作れます。赤・緑・青のそれぞれのサブピクセルで8ビットの階調が作れますので、これらの組み合わせで、256の3乗で約1677万色の作れます。これが10ビットになると、約10億7374万色が表示できるようになり、格段に階調性が高くなります。
ソニーの4K液晶テレビX90Lなどでは、「XR Smoothing」という機能で、地デジやブルーレイディスクなどの8bit映像や、HDR信号などの10bit映像を14bit相当の階調表現にして出力ことができ、非常に美しい階調表示ができます。
関連記事:ガンマ補正とは?ディスプレイの階調とフルカラー表示について
ディスプレイのフレームレートは?
地上波デジタル放送や4K/8K放送では、映像信号は毎秒60コマ(60pあるいは60Hz)となっています。動画表示の原理は、静止画を次々にめくっていくパラパラ漫画と同じです。コマ数を増やすほど動きが滑らかな動画になります。
しかし、人間の目でわからない上限のコマ数を超えると、それ以上コマ数が増えても見た目の違いが感じられなくなりますので、映像データとして無駄が多くなります。人間の目で違いがわからなくなるコマ数をギリギリ超える程度がもっとも効率が良いわけです。
最近は4Kのビデオカメラが販売されていますが、ほとんどのモデルは4K映像のフレームレートが30pになっています。30pで撮影した4K画像を見ると、ほぼ誰がみても動きがカクカクしているのがわかるでしょう。
倍速機能が付いていないテレビで60pの動画を見ても、注意深く見れば動きが滑らかではないということが分かるでしょう。したがって、テレビの上位機種には倍速機能が付いており、フレームレートが120pになっています。
「実物が目の前にあるように」という点では、動きが滑らかでないとリアルに感じられません。したがって、フレームレートは画質を決める重要な要素なのです。
テレビとしてはフレームレートが120pあればほとんどの人は満足できるレベルのようです。しかし、ゲーミングパソコンのモニターなどでは、もっと高速の応答が求められ、240pの機種も多いです。
ディスプレイの色域とは?
ほとんどのディスプレイは、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の光を混色して様々な色を作り出しています。そのためこれらのRGBを3原色と呼んでいます。
技術的には、3原色の波長スペクトルの中心波長と波長幅によって、混色によって作り出せる色の範囲が異なります。この作り出すことができる色の範囲を「色域」と呼んでいます。
従来のブラウン管テレビや地デジ対応テレビでは、表示できる色の範囲がかなり限られていました。どういうことかというと、現実の世界の風景などをカメラで撮影し、映像信号に変換してテレビに表示すると、本物の色とは異なる色になってしまうということです。
4K/8K放送では、まず映像信号の規格として色域を広げ、地球上にある物体の色のほとんどを忠実に表現できるようにしました。
その映像信号を表示するテレビも、従来のテレビに比べ色域を拡大する研究開発が進められ、鮮やかな色表示が可能になっていますが、現時点では映像信号の色域を完全に表示できるところまでは到達していません。
したがって、同じ映像を異なるディスプレイ(テレビ)で表示すると、機種によって色が微妙に異なるということが起こり得ます。
「実物が目の前にあるように」という点では、本物と同じ色で表示すべきですので、ディスプレイもまだ発展途上です。
関連記事:ディスプレイの色域とは?Rec.2020・AdobeRGB・DCI-P3とは?
ディスプレイの輝度(ダイナミックレンジ)とは?
日差しの強い時に、水面や金属面で光が強く反射し、「眩しい!」と感じて思わず目をそらすことがあります。しかし、同じような光景をテレビで見た時には、必ずしも「眩しい!」と目を反らすほどではないでしょう。それはディスプレイの画面の最大の明るさ(輝度)が制限されているためです。
また日差しの強い時でも日陰があり、特に日の当たらない場所ではかなり暗いです。外の一番明るい場所と比べると、明るさは何十万分の1程度であることも珍しくありません。
ディスプレイで同じ画面内に非常に明るいところと暗いところを同時に表示すると、明るいところが白く飛んでしまったり、暗いところが黒くつぶれてしまったりします。つまり、私達が目にする周囲の光景は、明るさの範囲でいうとディスプレイでは表示できないほどものすごい暗いところから明るいところまであるわけです。
「実物が目の前にあるように」という点では、現実の世界と同じ明るさの範囲(ダイナミックレンジ)を表示できるディスプレイが求められます。それは映像信号から対応する必要があります。そのためテレビに導入が始まっているのが、HDRです。従来よりも格段にダイナミックレンジが広がり、メリハリのある映像表示ができるようになっています。
関連記事:HDRとは?テレビの画質は何で決まるの?HDR10とHLGとは?
まとめ
ディスプレイの画質を決める主要な5つの要素、「解像度」「ビット深度(階調性)」「フレームレート」「色域」「輝度(ダイナミックレンジ)」について紹介しました。高画質のディスプレイで、美しい映像を楽しみましょう!
有機ELテレビと液晶テレビのどっちを選ぶべきかについてこちらの記事で紹介しています。
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