有機ELは寿命が短い?改善案をLGが発表!印刷方式は?

有機EL

有機ELがスマートフォンや大型テレビに搭載され、普及しています。有機ELの弱点として、液晶に比べて寿命が短いということが指摘されています。しかし、これらの普及を見ても、スマホやテレビ用には十分な寿命があると考えられます。それでもなぜ「有機ELは寿命が短い」と言われるのでしょうか?以下に紹介します。

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有機ELは寿命が短い?

冒頭で述べましたように、スマホやテレビ用のディスプレイとしては、有機ELは利用可能なレベルの寿命があると考えられます。どのような方式のディスプレイでも、永遠に使用できるということはあり得ず、必ず寿命があります。これはある意味当たり前です。形あるものはいつかは壊れるわけで、ディスプレイに限らず、工業製品には寿命があるわけです。

仮に1日8時間・毎日使用すると考えると、1年間で2,920時間、10年間で29,200時間です。昔のブラウン管のテレビは、感覚的には6~7年使用すると、かなり色褪せた印象がありましたが、おそらく現在の大型有機ELテレビはもっと寿命が長いでしょう。

スマホのディスプレイについては、ほとんどの人が1日に使用する時間がもっと短いですし、数分間画面にタッチしないと消灯する機能も付いていますので、実質的な画面の点灯時間はそれほど長くないでしょう。

さらにほとんどのデジタル機器は、その他の部品が壊れてしまったり、新製品の性能向上のペースも速いので、買い替えまでの平均寿命が10年以下のことがほとんどです。このような状況を考えると、スマホやテレビ用として「普通」に使用する範囲であれば問題ないレベルの寿命はあると考えられます。

しかし、注意しなければいけないのは、有機ELは輝度(*画面の明るさ)をアップするほどかなり寿命が短くなる特性があることです。有機ELでは、有機化合物からなる赤色・緑色・青色の発光層に電流が流れることで光が放出されます。厳密に言えば、電流が流れて発光する度に、ほんの少しずつ発光材料が劣化し、壊れてしまいます。したがって、必ず寿命があるのですが、劣化した発光材料の割合が少なければ問題ないわけです。

ところが輝度を高くしようとすると、電流を大量に流さなければならず、短時間で多くの発光材料が劣化してしまうことになります。そのためほとんどの有機ELディスプレイでは、画面のピーク輝度(表示できる最も高い輝度)を、ある値以下に抑える機能が付いています。

このような有機ELの寿命・劣化についての特性が、車載などの一部の用途では問題となり、普及の妨げとなっています。

有機ELの焼き付きと寿命は意味が異なる

前述のように、有機ELは画素を発光させれば少しずつ発光材料が劣化することは避けられないのですが、それでも画面全体が均一に劣化していけば、劣化が分かり難いです。ところが同じ画像を長時間表示し続けると、その表示画面の明暗に対応して、画面内の場所ごとの劣化度合い差が生じます。これが「焼き付き」の原因となります。

必ずしもまったく同じ画面でなくても、画面の中の特定の部分に同じ画像を表示し続けると、その部分に焼き付きが生じる可能性があります。例えばテレビであれば、画面の同じ位置にその放送局・番組のロゴなどが表示され続けると焼き付きとなることがあるわけです。そのような観点では、スマホは同じ位置に同じアイコンが表示され続けることが多いので、焼き付きが懸念されます。

有機ELテレビの焼き付きについては、こちらの記事「有機ELテレビの焼き付き問題は解消したのか?保証してもらえるの?」で詳しく紹介していますのでご覧ください。

有機ELの寿命は、一般的には初期の画面の明るさの50〜70%などになった時点などを意味することが多いので、焼き付きとは意味が異なります。しかし、使い方によっては、寿命よりも焼き付きがひどくなって買い替えたくなる場合もありますので、そのような意味ではユーザーにとって寿命と言えなくもないですが、技術的な意味では別に定義されていると理解しておけば良いでしょう。

テレビ・スマホ・車載で有機ELは主流になるのか?

有機ELの用途別に今後のトレンドを解説します。

テレビ

テレビとして今後も液晶が主流であるのか、それとも有機ELが主流になるのかという点では、当面は液晶が主流になります。それは世界のテレビ用液晶パネルと有機ELパネルの生産能力から見積もっても明らかで、生産した有機ELパネルがすべて製品に搭載されたとしても世界のテレビの販売台数から考えて主流(=過半数)になるにはまだまだ少なすぎます。詳しくはこちらの記事「有機ELテレビは液晶テレビのシェアを奪い主流になるのか?」で紹介しています。

しかし、中国勢による猛烈な液晶パネルの大量生産により、液晶パネルと液晶テレビの価格は大きく下がり、世界トップのサムスンやLGでさえ液晶パネルおよび液晶テレビ事業で利益を出しにくくなっています。もはや中国勢が猛攻を仕掛けてくる液晶テレビでは勝機が見い出せず、急速に有機ELテレビにシフトしようとしています。日本メーカーも、利益が得られやすい有機ELテレビを重点的に販売したいと考えており、年々有機ELテレビのシェアが大きくなっていくことは間違いないでしょう。

これまで液晶テレビに注力してきたシャープでさえ、有機ELテレビの販売を始めると発表していますので、この流れに逆らうのは難しいようです(詳しくはこちらの記事「シャープが有機ELテレビを発売!その背景は?」で紹介しています)。

スマホ

スマホについても、AppleのiPhone Xが有機ELパネルを採用してから、ハイエンドスマホでは一気に有機ELが主流になりました。最近ではサムスンの折りたたみスマホも販売好調で、液晶パネルでは真似のできないような有機ELパネルの特徴を前面に出した製品が次々に登場しそうな状況です(こちらの記事「Samsung Galaxy Z Flipが売れている!折りたたみスマホの躍進!」で紹介しています)。これまでは液晶パネルに比べて有機ELパネルが高価であることが普及の妨げになっていましたが、販売台数が伸びるほど価格も下がり、さらに販売台数が伸びるという好循環になっていくでしょう。

車載

車載用ディスプレイについては、現状では有機ELパネルの採用の目処が立っていません。これは車載に求められる高温下・高輝度での耐久性という課題を有機ELがクリアできないためです。当面は液晶ディスプレイの牙城として残るでしょう。詳しくはこちらの記事「車載用のディスプレイは液晶強し!有機ELはまだ?」で紹介しています。

有機ELの寿命を改善する提案をLGが発表:テレビ用

韓国のLGは、有機ELの寿命を改善する提案を2つ発表しました。一つはテレビ向けの白色蒸着方式(カラーフィルター方式)についてのもので、もう一つはRGB蒸着方式によるものです(*RGB蒸着方式については次項で解説します)。

白色蒸着方式では、青色、緑色+黄色の発光層を積層し、白色を作り出し、その上に各サブピクセルごとのカラーフィルターを配置することで、フルカラー表示を可能としています。新たな提案では、これらの上にさらにもう一層青色の発光層を積層しています。これは青色の発光効率が他の色の発光効率よりも低く、必要な明るさを得るために多くの電流を流さなければならないからです。

有機ELの場合、各発光層に流れる電流が多くなるほど寿命が短くなりますので、発光層の数を増やすことで、全体としてある輝度を得るための各発光層に流す電流を少なくできるわけです。さらに最近の色域拡大のニーズにも対応するために、赤色の発光層も追加されています。

これらの改良により、従来の2.5倍程度まで寿命が改善しているとのことです。有機ELテレビは、液晶テレビに比べると最大輝度を低めに設定されていますので、新たな技術が使用されれば、より高い輝度を表示できる有機ELテレビとなる可能性があります。

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有機ELの寿命を改善する提案をLGが発表:車載用

大型テレビ用の白色蒸着方式は、現在LGのほぼ独占状態です。スマホ用のRGB蒸着方式はは、Samsungが強いです。

主要なディスプレイの用途として、車載用は高温下で高い輝度を必要とする、有機ELにとってはもっとも厳しい用途です。これらの要求スペックを満たすためには、まずはできるだけ効率を向上させて、少ない電流で高い輝度を目指すことになります。

効率という観点で見ると、カラーフィルターを使用する白色蒸着方式よりも、RGB蒸着方式の方が原理的に有利です。そのためLGは、有機ELの車載用途への採用を目指して、新しいRGB蒸着方式の提案をしました。

それはRGB蒸着方式のタンデム構造です。つまり、1層であった発光層を積層して2層とし、ある輝度を得るために流さなければいけない電流を低く抑えようとするものです。その他の工夫も合わせて、LGでは従来比で4.5倍に寿命を改善することに成功したと発表しています。

このタンデム構造にする方法は、原理的にも理解しやすく、効果も実証されていますが、最大の課題は量産技術の確立でしょう。RGB蒸着方式はSamsungが先行していますが、そのSamsungでさえ、大型の量産はあまりの技術的な難しさから断念しました。RGB蒸着方式では、高精度なメタルマスクを精密に位置合わせして使用するのですが、大型になるほどメタルマスクも大きくなり、熱膨張やたわみなどによる影響が無視できなくなり、精密なRGBの蒸着が難しくなるためです。

LGは、このメタルマスクを使用するRGB蒸着を、2層分行うわけですので、2倍の工程となり、かなり難易度が高いと考えられます。今後の動向に注目です。

有機ELの印刷方式の寿命は?

スマホに使われている有機ELは、主に蒸着で赤・緑・青の画素を塗り分けて作る方式です。大型テレビ用は、赤・緑・青の発光層を蒸着で積層し、白色を作り出し、カラーフィルターを使ってフルカラーにしています。これらに遅れて、JOLEDなどが中心となって進めているのが印刷方式です。

インクジェットプリンターのように赤・緑・青の画素を印刷して製造していくことができ、カラーフィルターを使わずに中型から大型まで対応できます。そのためカラーフィルター方式よりも高い効率が実現できるのですが、弱点は有機ELの発光材料の寿命が短いことです。これはインクジェット方式にするため、蒸着で使用する発光材料とは異なるタイプを使用せざるを得ず、その物質の性質や印刷プロセスなどに影響を受けているようです。

JOLEDも蒸着方式で製造するものよりも現時点では寿命が短いことは認めていますが、改善に取り組んでいるとのことです。実際、蒸着方式の有機ELも初めて製品が出てからかなり寿命が改善されました。印刷方式はまだ製品がでたばかりですので、今後大きく改善される可能性はあるでしょう。期待しましょう!

JOLEDは中国の大手TCL CSOTと資本業務提携をすることを発表しました。印刷方式の有機ELがテレビ用大型有機ELの生産に活用されるかもしれません。詳しくは、こちらの記事「JOLEDがTCL CSOTと資本業務提携!テレビ用大型有機ELへ!勝算は?」で紹介しています。

まとめ

有機ELの寿命と、最近のLGによる長寿命化の提案について紹介しました。技術は日進月歩ですので、今後、どのような進展があるのかフォローしたいです。

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