ニッスイに見る日本の水産企業の現状と成長戦略!魚の自給率は?

魚 産業動向

日本人は魚介類をよく食べ、世界的に高く評価されている日本食も魚介類なしでは語れません。海外でも日本食のお店が増え、日本人が好む魚料理の海外での需要も増えています。

増え続ける世界人口と消費が拡大する水産資源のことを考えると、日本の魚に関する食糧危機が心配になり、自給率が話題になることもあります。

日本人に多くの魚介類を供給する役割を果たしている日本の水産企業の1つである日本水産に注目し、現状と成長戦略について紹介します。

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日本水産は時価総額1位の日本の水産企業

日本の水産企業の大手といえば、通常はマルハニチロ(証券コード:1333)と日本水産(1332)が挙げられます。2020年3月期決算を見ると以下のようになっています。

マルハニチロ 売上高約9052億円 営業利益約171億円(*四捨五入しています)
日本水産 売上高約6900億円 営業利益約228億円(*四捨五入しています)

このため売上高が大きいマルハニチロを、日本の水産企業トップとして紹介されることが多いです。

しかし、2020年9月18日時点での時価総額を見ると以下のようになっています。

マルハニチロ 約1291億円
日本水産 約1434億円

最近は時価総額ランキングが注目されることが多いので、主に日本水産に注目しながら日本の水産企業について見てみます。

新型コロナウイルス等の影響で株価が大きく下げている局面とは言え、PER9.5倍、PBR0.93倍とかなり評価が低いです。最近の5年間の業績を見ても、比較的安定し、自己資本比率を2016年3月期末の21.30%から2020年3月期末の31.16%まで高めてきているのですが、営業利益率が3%台で、成長戦略が伝わりにくいところが割安な評価につながっているのかもしれません。

日本人の魚離れが進んでいる

農林水産省の調べによると、日本人1人当たりの年間の肉類の消費量は増えており、魚介類の消費楼は減少し続けています。特に魚を買ってきて、頭部などの食べない部分が残り、それを廃棄しなければならないようなことが敬遠される原因の1つとされています。ゴミの収集日などの関係もあり、自宅である程度の期間生ゴミとして保管しなければならないためです。

その点、切り身などは魚介類の中では比較的人気があります。つまり、日本人が多く食べる魚の種類も変化してきています。最近はサケ・マス類の輸入が多いです。2017年時点で日本の魚介類の自給率は約55%となっています。

日本水産の2019年度の地域別売上高を見ると、71.8%が日本です。日本人の1人当たりの魚の消費量が減り続け、さらに日本の人口が減少していくわけですので、国内市場だけに依存していると日本水産としては厳しい状況となります。

もちろん日本人に人気の高い魚種に注力する、中食などの加工品を開発する、コストダウンの努力をするなどの対策には取り組んでいますが、増え続ける世界人口と海外需要を考えれば海外での売上を伸ばす努力をする必要があります。

実際、日本水産はM&Aや提携などを進め、海外でのビジネスを伸ばす取り組みを進めています。売上高の規模は世界的に見てもすでに大きいのですが、収益力では海外企業と比べて大きな差があります。

例えばノルウェーのMarine Harvest社は、売上高約4355(百万ドル)で日本水産よりも少ないのですが、営業利益が約1331(百万ドル)もあります。営業利益率がなんと30.6%です!時価総額も約9250(百万ドル)と何倍もの差があるわけです。

他の産業と比べても営業利益率30%以上はかなり高いですが、日本水産の3%台の営業利益率は海外の主要な水産企業と比べて低く、向上が期待されます。


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世界の水産業は養殖が重要

世界的に魚介類の消費量が増えていますので、天然の魚介類を獲るだけではもはや水産資源を維持できなくなっています。そのため世界的に養殖が進められており、2013年についに天然の水産物よりも養殖の水産物の生産量の方が多くなっています。

したがって、水産業の成長を考えると養殖技術の高度化・効率化が競争力に大きく影響するでしょう。すでに海外でもそのような取り組みが進められていますし、日本水産でもマサバ循環式陸上養殖試験やサケ閉鎖循環式養殖などを進めています。

「日本の魚介類の自給率は約55%」ということを前述しましたが、海外から魚介類を輸入しているのは国内生産品よりもコスト・品質の点で競争力が高いからです。業界類の価格は相場(市況)があり、価格が暴落しないように供給量を調節しなければなりません。

最近は新型コロナウイルスの影響で外出が減り、外食産業やコンビニエンスストアなどで販売される魚介類の需要が急減しています。自宅用の魚介類は少し増えているのですが、これらの業務用の落ち込みを補うほどではありません。

よく海外での魚介類の需要増加の話を聞くと、「日本で魚介類がたべられなくなる!」といった食糧危機的な話になりがちなのですが、現実には水産会社や商社が日本へ魚介類を輸入するルートを持っていますし、日本の水産企業も日本向けの生産量を調節しているわけですので、すぐに食糧危機を心配するような事態になるとは考えにくいでしょう。

逆説的ですが、日本での魚介類の消費量が増えれば、日本の水産企業の日本向けへの生産量も増え、日本国内での養殖事業も大きくなると考えられますので、魚介類についての食糧危機のリスクは下がるでしょう。

日本水産の成長のために必要なことは?

2020年3月期の決算が株主総会で報告され、その際に2021年3月期末を最終年度としていた中期経営計画の達成が困難と発表されました。新型コロナウイルスの影響が世界的に大きく、止むを得ないところでもあります。新型コロナウイルスの影響が無ければ達成されたかどうかについてはわかりませんが、売上は成長軌道にあったように見えます。

近い将来に新たな中期経営計画が作成されると考えられますが、海外売上を増やすため投資、業務効率を高めるための投資は必須です。幸い、比較的安定したキャッシュフローがありますので、それらをどのように使うのかが経営手腕にかかっています。

またEPAやDHAなどのファインケミカル事業は利益率が高いため、現在の売上構成比3.9%からどこまで伸ばせるのかも重要です。日本の人口現象が進み、国内売上高への影響が大きくなる前にしっかりとした成長軌道に乗せる必要があるでしょう。

研究開発としては、養殖技術が重要です。あらゆる産業で著しい技術の進歩があれば、大きな効率向上に結びつくことは歴史が証明しています。世界トップの養殖技術の開発に期待したいですね。

まとめ

日本水産(ニッスイ)を中心に、日本の水産企業について紹介しました。売上規模は世界トップレベルなのに、効率で海外企業に負けている状況ですので、今後の成長に期待したいです。

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