大学の国際化と留学生!科学技術と研究開発を支えるのは誰?

研究 大学の研究力

日本の大学は、国の方針に則って国際化を進める方向で努力を続けています。「日本が世界の中で発展していくためには、大学を国際化する必要がある」と言われると、何となく納得してしまいますし、大きな視野で考えた時にこれを否定するような正論も無いのではないでしょうか?

しかし、現実に日本の大学で起こっていること、米国の大学で起こっていることなどをいくつかピックアップして見てみると、悩ましい点も出てきます。特に理系の大学と産業について紹介します。

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日本の大学の国際化の状況

国の方針に従って日本の大学は国際化する努力を続けています。具体的に何をもって「大学の国際化」とすべきなのかは議論がありますが、日本の大学の場合、基本的には国の方針に基づき、文部科学省の所轄の下に運営されますので、国によって定められた「国際化の指針」に沿って進められます。

その中の1つに留学生の受け入れがあります。大学は人を育てる教育機関であり、大学を国際化するのであれば留学生を増やすということは、ある意味自然です。

また海外の大学と単位交換制度などを設けて、比較的短期間の日本人学生と海外の大学との交換留学なども行われています。

これは学生の視点から考えれば、日本の大学に進学しても留学生と交流したり、海外の大学に短期留学するチャンスがあることになりますので、大変有意義な経験となります。ビジネスなどもグローバル化していますので、できるだけ早い時期に海外の人・文化に触れる機会を得られれば、教育として意味のあるものになるでしょう。

しかし、日本へ来る留学生の出身国と、日本人が留学する国を見ると少し複雑な気持ちになります。2009年の調査結果(桑村昭、愛知県立大学外国語学部紀要第 45 号(地域研究・国際学編)、p191)によると、日本に来る留学生の出身国と日本人の留学先国は、上位から順番に以下のようになっています。

【日本への留学生出身国】

第1位 中国 79,082 59.6%
第2位 韓国 19,605 14.8%
第3位 台湾  5,332  4.0%
第4位 ベトナム 3,199 2.4%
第5位 マレーシア 2,395 1.8%

【日本人の留学先国】

第1位 米国 24,842 41.4%
第2位 中国 15,409 25.7%
第3位 イギリス  3,871  6.5%
第4位 オーストラリア 2,701 4.5%
第5位 台湾 2,142 3.5%

大学生が相互に留学し、そえぞれの国の文化を理解し合うことは、国際協調という点で極めて大切なことです。そして人レベルでの繋がりが強化できれば、国家間のいろいろな問題を協力して解決していけるベースとなるでしょう。

このような世界平和・国際協調のような普遍的で大切なことを考えれば、大学の国際化はどんどん進めるべきでしょう。しかし、産業が国際的に水平分業化し、国際的な競争が熾烈になった現代では、理系の研究開発という点では不安もあります。

日本の大学と産業は米国と同様になるのか?

前述の留学生の国別のランキングは、あらゆる分野が一緒になっていますし、期間等も長短様々です。本格的な研究をする大学院の留学生の統計データが入手できなかったのですが、いくつかの理系の大学の研究室を見る限り、日本に留学してきている学生の出身国は前述のランキング通りのようです。日本から研究をするために博士課程などに留学する相手国としては、米国が圧倒的に多いようで、あまり中国への留学はいないような印象を受けます。

戦後、日本が復興する過程で多くの人材を米国に送り出し、最先端の科学技術を学び、日本へ持ち帰り、産業振興に大いに活用しました。そのような歴史を振り返れば、米国の懐の広さを感じますし、日本へ多くのアジア諸国から留学して来てくれる状況を誇りに感じます。

しかし、現在の米国の理系の大学および製造業の研究開発はどのようになっているのでしょうか?私が知っているある米国の大学の化学系の研究室では、2000年代前半の時点でほとんどがアジアからの留学生で過半数が中国人でした。米国内で生まれ育った米国人が化学系の学科にはあまり進学せず、特に博士課程にはほとんど進学しないという話を当時聞いてショックを受けたことをよく覚えています。

その研究室の教授の話では、米国人は弁護士や投資銀行などのもっと給料の高い職業を目指す人が多いとのことでした。米国の有名大学では、年間の授業料が数百万円にもなることも珍しくありません。ローンを組んで大学に進学したら、給料の高い職業を目指すことも理解できますし、博士課程のように大学院で長期の研究に取り組むよりも早く就職したいと考えるようになるのも無理もないでしょう。

また中国からの留学生は、全員ではないですがかなりの割合で国費で留学している学生がいます。中国として、将来の中国の発展のために留学させているわけです。もちろん私費留学の学生もいますし、そのまま米国で就職する学生もいます。

現時点では、米国の大学の研究開発は多くの中国人留学生によって支えられていますし、米国と中国の国際的な共著論文も増えています。当然のことながら米国のメーカーの研究開発を多くの中国人が支えています。グリーンカードを取得してそのまま米国に残ることを選択することも多いです。

最近の日本の大学の理系の研究室を見ていて感じるのは、日本の大学も米国のようになっていくのかということです。博士課程に進学し、その後ポスドクとして苦労した結果、低収入と不安定な職に苦労する人が多くなったことから、日本人で博士課程に進学する人は減少しています。そうすると多くの研究室で、博士課程は中国を中心とした留学生ばかりという状況が多くなっています。

日本の大学の学費も高くなり続けていますし、日本の労働者の可処分所得は減り続け、子供を下宿させて大学進学させられる家庭も少なくなっています。そうなると学費が高く、大学院まで進学することが多い理系の研究者を志す人が減ることも無理はないでしょう。

日本の大学は国方針で留学生比率を高めていますし、少子化・人口減少の影響もあります。日本の科学技術を支える理系の日本人大学生の絶対数が減っていくことは間違いなさそうです。そうなると日本のメーカーで研究開発に従事する日本人も減ってくるのではないでしょうか?


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米国と中国の衝突が国際化を不透明にする?

米国ではビザの発給を遅らせるなどにより、中国人留学生を減らす動きがあります。2017年12月をピークに少しずつ減少しています。このまま米国と中国の衝突が激しくなった時に、さらに中国人留学生を減らす方向に進むのか徐々に緊張度が高まっています。

中国からの論文数は、すでに日本を追い抜き、近い将来、米国も抜くと見られています。中国内では、ScienceやNatureなどの欧米の権威ある論文に投稿するのではなく、中国国内の論文誌に投稿するように促す動きもあります。

米国の大学の研究活動は、優秀な中国人留学生に支えられていますので、中国人留学生を排除してしまうと研究水準を維持できない可能性があります。さらに優秀な人材を米国の産業界に供給していたわけですので、それが途絶えると産業界の弱体化まで懸念されます。改めて人材の重要性を痛感します。

米国は半導体関連産業について、多くの企業に中国への供給に制限をかけています。この流れが日本の大学の留学生にも影響が出てくるようなことになるとかなり深刻です。国の大学国際化の方針を修正する必要も出てきますし、日本人の理系離れを改善する必要も出てくるかもしれません。

ディスプレイ産業のように日本から大きく育った産業が中国・韓国・台湾に奪われるということが起こっています。日本の大学は企業との共同研究を増やし、外部資金を獲得するように指示されています。日本企業として研究費を出し、同じ研究室にアジアからの留学生が居て、卒業後に帰国してライバル企業へ就職するようなことになると、本当に日本にとって良いことなのか悩ましい状況になります。

今後の動向を注視したいです。

まとめ

日本の大学の国際化と留学生の国別比率、それから将来の製造業への影響を紹介しました。国際的に難しい状況です。

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