東京大学の大学債発行にみる日本の大学の将来!他大学は?

大学 大学の研究力

東京大学が大学債を発行すると大きく報道されています。規模は200億円、年限は40年で10月上旬にも発行する見込みです(*日本経済新聞の2020年8月21日時点での報道であり、諸条件は確定情報ではありません)。それは何を意味するのでしょうか?大学の将来について考えてみます。

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東京大学が大学債200億円を発行

東京大学のホームページによれば、第1回東京大学債券発行に係る主幹事証券会社は、以下のように決定しています。

事務主幹事 大和証券株式会社
共同主幹事 みずほ証券株式会社、SMBC日興証券株式会社

2019年9月19日の発表では、東京大学が株式会社格付情報センター(R&I)より信用格付を新規に取得したことが発表されています。信用格付は「AA+」です。債券発行に向けて着々と準備してきたようです。

さすがに日本のトップの大学ですし、国立大学法人ですので信用力は高いでしょう。今後、どのような条件の大学債になるのかまだわかりませんが、それなりに良い条件になると予想されますし、ニーズもあるでしょう。

今後数年かけて、1000億円程度発行することを想定しているとのことです。

東京大学が大学債を発行する理由は?

日本の国立大学は、2004年の国立大学法人化以降、運営費交付金、補助金などが削減され、大学自らの努力によって外部から資金を調達するように促されています。これが理工系の研究環境を著しく厳しい状況に追い込んでいることはこのブログでも書いてきました(記事「大学の研究費削減・研究力低下・学費の値上げなどのまとめ!」参照)。

債券の発行は、外部から資金調達し、大学経営に役立てることが目的です。財政難の大学にとっては、資金調達の方法として今後は重要になると考えられます。

そうは言っても、東京大学の場合は日本の大学の中でもっとも多くの公的な資金(競争的研究資金など)を獲得していると考えられ、数ある国立大学の中でももっとも優位な立場にあるでしょう。国主導の大学改革も、東大が真っ先に行うことも多く、今回の大学債発行についても多くの大学が注視しているはずです。

この資金調達が大学経営を支えることは間違いありません。国立大学法人への国からの交付金の削減は今後も続いていくので、財務内容が悪化する前に長期の債券発行をすれば、より良い条件で資金調達できるでしょう。


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東京大学の大学債についての疑問

大学債の利回りがどの程度に設定されるのか現時点ではまだわかりません。私立大学では、入学した学生向けに無利子の大学債を発行する例はありますが、今回の東京大学の大学債はさすがに無利子ということはないでしょう。

債券を発行して借金をするわけですので、それはいずれ返済しなければなりませんし、利子を払わなければなりません。企業であれば、借金をして投資し、売上・利益を上げて借金と利子を返済するということは普通に行われることですので、トータルで利益が上げられるのであれば借金をすることは経済的な観点でも合理性があります。

つまり、200億円、将来的には1000億円規模まで借金をして何に投資し、利子分を上回る利益を上げていくのかが現時点ではよく見えてきません。最近の大学は財務情報をサイトに掲載するなどして情報開示が進んできています。しかし、教育・研究が本業であり、今後どのように収益を上げていくのかは外部からはわかり難い状況です。

教育という点では、入学金と授業料収入が主な収入源です。しかし、国立大学法人化の頃に、学費の高騰を防ぐために授業料の上限は法律で定められています。そのため投資をして教育内容の向上をアピールできても、授業料の大幅な値上げは難しいはずです。また学生数と教員数についても、国により制限されていますので、無闇に学生を増やして収入を増やすことも難しいでしょう。

もし授業料の上限を撤廃するような状況となれば、米国の有名大学のように授業料が年間数百万円もするような事態になりかねませんので、それは日本の社会としては許容され難いように思います。

研究をして特許を取得して多額の特許収入を得るということもよく語られます。確かにホームラン級の素晴らしい特許を大学が取得する可能性はありますが、そのような成果が出る確率は低く、さらにその特許に対して莫大なライセンス収入を得ることは非常に確率が低いです。

そもそも特許には出願から20年という期限がありますし、その中の何年間ライセンス収入を得られるのかもわかりません。大学が特許の取得とライセンス活動を本格的にやろうとするならば、多額の費用がかかります。ほとんどの大学で特許収入からそれにかかる経費を差し引いたら赤字あるいは非常に少ない黒字と考えられます。

さらに言えば、その特許を取得するために投じた研究費・人件費を通常は特許のライセンス活動に計上していません。研究費は国からの競争的研究費や企業からの共同研究費を充てることが多く、常勤の教員の給与は特許収入を得られる研究をしても変わらないためです。

つまり、積極的に研究に投資をして特許のライセンス収入を増やそうとしても、トータルでプラスにすることはかなり難易度が高いはずです。これはほとんどの企業が、研究成果を活用して製品を開発し、それを販売することで利益を上げているという事実を見れば明らかでしょう。

可能性としては、投資をして、外部から得られる共同研究費・委託研究費を増やす方法の方が確率が高そうです。それにしても商業ベースの分析センターになるのではなく、大学としてのステータスを維持しながら研究だけで利益を上げていくことは簡単ではありません。

その他、教育・研究とは異なる直接的なビジネスに取り組んでいく方法もあるかもしれません。またそのような企業に出資するという方法もあるでしょう。

いずれにしても大学債で得た資金を何に投じて収益を上げていくのか、中期経営計画などで公表すべきと考えます。東京大学の取り組みが他大学にも大きな影響を与えるでしょう。

まとめ

東京大学の大学債発行について紹介しました。長期の債券ですので、一時的な資金繰りを凌ぐためではなく、今後の大学経営を睨んだ投資に充てられると考えられます。おそらく長期の戦略を熟慮した上での行動と考えられますので、できるだけ早い時期の経営計画を公表して欲しいですね。

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