SID2020に参加!見えてきた学会・国際会議のオンライン化の可能性

サンフランシスコ SID2020

ディスプレイ分野の世界で最も大きく権威ある学会であるSID(Society for Information Display)が主催する国際会議&展示会「Display Week 2020」が、米国時間の2020年8月3日から始まりました。SIDによる初めてのオンライン開催となる同行事に参加しましたので、開催方法の観点からその概要を紹介します。そこから今後の学会や国際会議の動向を考えてみます。

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SID Display Week 2020がオンライン開催

SID Display Week 2020は、当初は2020年6月7-12日に米国サンフランシスコで開催される予定でした。しかし、世界的な新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により、延期・中止等も検討されましたが、最終的に2020年8月3-7日の日程でオンライン開催されることとなりました。

SID Display Weekは、これまで年に1回、5〜6月に開催され、シンポジウム、セミナー、展示会の合計の参加者が7,000人程度となる大きなイベントです。単純に人数だけでなく、ディスプレイ分野の主要なメーカー、大学の研究者が世界中から参加し、多くの発表・展示が行われる点からも、ディスプレイ分野の専門家であれば外せないイベントとなっています。

SID Display Weekを開催するために国際会議場と展示場を予約していたので、ギリギリまで通常開催の可能性を検討していた状況から、通常開催を断念し、オンライン開催の準備を始め、上記の開催に間に合わせた主催者側の努力は相当なものであったと推察されます。またそれを可能にした資金面の強さもかなりなものでしょう。

主催者側の視点で、「シンポジウムをどのようにオンラインで開催するのか?」、「展示をどのように行うのか?」など、初めてのオンライン開催となると悩ましい問題が山積です。それは「インターネットとパソコンを使った通信技術的に利用しやすいか?」、「講演者、展示員、参加者の協力が得られるのか?」、「費用的に妥当で、行事として黒字にできるのか?」などの点で責任を持って進めなければならないからです。

実際にどのように開催されたのかについて、以下で紹介します。

SID Display Week 2020がオンライン開催方法

前述のような経緯でオンライン開催が決定後、参加登録(Registration)がSIDのサイトでできるようになりましたが、その開催方法の詳細はすぐには案内がなく、米国時間の2020年8月1日にメールでログインのURLが届き、それ以降に確認できるようになりました。

実際にログインしてみると、実際に学会会場に入ったようなロビーが背景になったホーム画面に移り、そこから会場内の各部屋に行くかのようにそれぞれのコンテンツにアクセスできます。最初にパソコンなどを初めてセットアップした時のように、このシステムを利用するためのガイドツアーが観られるようになっていて、それを見ればすぐに使えます。

Keynoteやシンポジウム、セミナーなどの講演は、事前に提出されたスライドと録音された音声が、指定された時間になるとストリーミングで視聴することができるようになっています。スライドがPDFでダウンロードできるようになっているのは嬉しいです。

シンポジウムの発表論文は、別途メールで送られて来たURLをクリックして開くサイトから、それぞれダウンロードできるようになっています。

展示は、ホーム画面から展示の場所へ行くと、出展社の看板があり、それをクリックするとそれぞれの展示スペースに入れるようになっています。映画のトレイラーのようにかなりお金をかけて説明ビデオを用意しているところも多く、楽しめます。出展者とはチャットなどでコミュニケーションを取れるようにしているところが多いです。

オンラインでの展示会は難しそうと思っていましたが、想像していたよりはかなり良かったです。ブロードバンドのが普及し、高画質の説明動画を気軽に楽しめるインフラが整ってきている恩恵を受けていると言えるでしょう。

ただし、ディスプレイの専門の学会の展示会としては、最新のディスプレイの試作品・発売直前の製品を実際に自分の眼で確かめられることに大きな意味があります。オンラインの展示会では、多くの人がパソコンで見ることとなり、どんなに高画質でビデオを撮影しても、映像を映すパソコンのディスプレイ以上には高画質にならない点に限界を感じます。特に大型のディスプレイとなると、直接見てその大きさを感じることも重要ですが、パソコンの小さな画面の中に収められてしまうのでリアリティが下がります。

これは簡単に解決できる問題ではないので、今後も課題として残るでしょう。


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SIDと日本の学会の比較

SID Display Week 2020は、SIDにとっても初めてのオンライン開催です。これまで経験がない状況から、6月の通常開催をギリギリで断念し、オンライン開催の日程を設定して8月の開催に間に合わせた主催者側の決断と手腕には敬意を評します。「ディスプレイ分野の世界トップの学会」としてのプライドが感じられます。

学会組織には一般に事務局がありますが、多くは大学と企業から専門家が手弁当で協力し、運営されています。SIDも、この行事の開催のために多くの専門家が働いています。

日本の学会組織は公益社団法人であることが多く、利益を出しすぎないように運営されています。さらに最近の学会員の減少のトレンドの中、事務局の専属スタッフは少人数で、学会によっては1人あるいは専属がいなくて外部に委託しているところもあるぐらい脆弱な体制です。日本では「学会は純粋な科学を重視し、どちらかというと大学教員が大きな責任を負っている」という文化がまだあるような印象を受けます。日本の主要な学会の会長が大学教員が歴代務めているところは、そのような傾向があるでしょう。

(*日本の学会員の減少については、こちらの記事「日本の学会の会員数は減少している!科学技術の未来は大丈夫か?」で紹介しています)

このデメリットは、資金を集めることが難しくなり、手弁当で働く大学等の教員が、かなり多くの業務をこなさなければならないことです。SIDのような力のある米国の学会組織は、資金力があり、専属のスタッフも有能な人材が揃えられています。企業の研究者や大学教員が、本来の専門知識を生かした業務に専念できるようになっています。

SIDのBoard Memberには、シリコンバレーの有力企業の職位の高い方々が名を連ねており、その方々が実際に学会に参加して働いています。そんな方々が本気でスポンサー集めをして、学会の運営に協力しているわけですので、資金力は日本の学会の比ではないでしょう。

そのような資金的な支えがありますので、積極的に新しいことに取り組むことができます。特に今回のようなITを駆使したオンライン開催となると、シリコンバレーの主要企業が最も得意とするところですので、技術力・人脈もフルに発揮されていると考えられます。今後、日本の学会が同様なことを行う場合の良い見本となるでしょう。

これは行事を開催する場合のリスクを想像してみるとリアルに感じられます。例年約7,000人が参加し、国際会議場と展示場を借りて1週間開催する行事の予算規模はかなりのものです。予算規模が大きくなるほど、集客予想が下振れした時の赤字は大きくなります。資金的な支えが十分ではない学会組織では、そのリスクを許容できません。

日本では学会運営となると、「科学か?産業か?」、「真理の探求か?金儲けか?」のような観念的な話になりやすい印象があります。いずれにしても世界レベルの活動を長期に継続していくことを目指すならば、独立性を保つための資金力が不可欠ですので、日本の学会はもっと財政力強化の方向で進めた方が良いのかもしれません。

学会・国際会議のオンライン化の可能性

SID Display Week 2020が最終的にどれぐらいの参加者となり、行事の収支としてどのような結果となったのか現時点ではまだわかりません。何年かに一度の頻度で、何らかの国際的な問題で国際会議を開催することが困難になる状況でも、オンライン開催という方法があることを実証してみせたという点で大きな意味があります。

そのような非常事態ではなく、通常の状況に戻った時に、オンライン開催を併用するのか否かに次の興味は移ります。オンライン開催を併用することで、実際に会場まで来て国際会議・展示会に参加する人が減る可能性がありますが、トータルとしての参加者は増える可能性もあります。

1周間海外出張して国際会議・展示会に参加するには多額の費用がかかり、職場で申請しても許可が得られないことも多いでっす。それがオンライン開催で、費用も数万円程度で済むとなると、参加へのハードルはかなり下がるでしょう。

主催者側のオンライン開催のコストと比較して、十分な収入が見込めれば、今後もオンライン開催が併用されるのではないでしょうか?

海外出張が好きな人にとっては、オンライン開催は不満が多いと思いますが、私のようにあまり海外出張が好きではない人間にとっては、日本に居ながら参加できるのでかなり嬉しいです。出張前後の業務の忙しさもかなり緩和されます。

SID Display Week 2020に参加するためには、SIDに入会する必要がありますので、会員獲得面でもかなりプラスに働く可能性があります。

このようなことを考えると、日本の学会にとってもオンライン開催のノウハウを蓄積し、参加者・会員増に繋げられるかが生き残りのポイントとなる可能性が高そうです。本当に世界的に評価される学会・国際会議ならば、オンライン開催はさらに世界的な存在感を高めるための大きな武器となるでしょう。

まとめ

SID Display Week 2020とそこから見えてくる学会・国際会議の将来像について解説しました。SIDに参加すると米国西海岸の「積極的に新しいことに取り組む文化」が感じられます。日本も真似できるところは積極的に真似していく必要があるでしょう。

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