JOLEDがTCL CSOTと資本業務提携!テレビ用大型有機ELへ!勝算は?

夜景印刷有機EL

JOLEDがTCL CSOTと資本業務提携契約を締結したことが2020年6月19日に発表されました。第三者割当増資により200億円を調達し、テレビ向け大型有機ELディスプレイの共同開発を開始するとのことです。さらに詳しく見てみましょう。

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JOLEDがTCL CSOTと資本業務提携!

株式会社JOLEDが資本業務提携契約を締結したのは、中国ハイテク企業TCL Tech傘下のディスプレイパネルメーカー、TCL華星光電技術有限公司(TCL China Star Optoelectronics Technology Co., Ltd.:TCL CSOT)です。

同社を引き受け先とする第三者割当増資により200億円を調達するとともに、独自の印刷方式有機ELディスプレイ製造技術を活用し、TCL CSOTとテレビ向け大型有機ELディスプレイの共同開発を開始します。

JOLEDは、印刷方式による4K有機ELディスプレイ製品の生産を行う、世界で唯一の会社です。ソニー株式会社、パナソニック株式会社の有機EL ディスプレイの開発部門を統合し、2015年1月に設立されました。

技術的な特徴は「印刷方式による有機ELディスプレイを製造する」点にあります。JOLED設立前から研究開発されてきた技術が、JOLEDに継承され花開いたわけです。現時点でもこの技術においては、世界のトップを走り続けています。

しかし、液晶ディスプレイの業界の歴史が示すように、脅威なのが韓国・台湾・中国勢の猛烈なキャッチアップです。技術的に先行し、事業化でも先行できたとしても、その後、圧倒的な資金力でキャッチアップされ、事業としても戦えない状況に追い込まれてしまう可能性があります。

日本企業も、これまでのディスプレイ分野の敗戦の歴史があるため、印刷方式による有機ELディスプレイ事業に巨額の投資をし、海外勢と真っ向勝負するという戦略はとりません。そのためJOLEDも、印刷方式による大型テレビ用有機ELディスプレイ事業については、パートナーを探し、技術をライセンスする方針を公表しています。

ディスプレイはテレビ・スマホ・パソコンが多い

高画質のディスプレイの用とはいくつかありますが、主要なものはテレビ、スマホ、パソコン用モニターです。パソコン用モニターは、ハイエンドの一部の機種を除けば安価なTN液晶モニターが使われていることが多く、あまり最先端のディスプレイが搭載されることは無いようです。特に有機ELディスプレイを搭載したパソコンモニターとなると、極めてレアな製品です。

したがって、最先端のディスプレイを研究開発・販売するメーカーは、テレビあるいはスマホである程度以上のシェアを獲得しないと生き残りが難しくなっています。

ディスプレイ業界では、ディスプレイパネルと製造するパネルメーカー、そのパネルを組み込んでテレビやスマホを作るセットメーカー、両方を手掛ける垂直統合型のメーカーがあります(*1社ではなく、グループ企業で垂直統合している場合もあります)。

日本では、ジャパンディスプレイ(JDI)とJOLEDがパネルメーカーで、ソニーがセットメーカー、シャープが垂直統合型メーカーです。それぞれのメーカーが多くの困難に直面し、乗り越えてきましたので、必ずしもどの形態が有利とも言い難いです。

しかし、状況から考えて、パネルメーカーは、巨額の投資をして大規模な工場を建設し、大量に生産したパネルを売り切らなければならず、最新の製造装置を導入してキャッチアップしやすい傾向があります。さらに国家の後ろ盾で巨額の助成が得られた中国勢が圧倒的に優位であることは否めません。

最終製品を手掛けるセットメーカーは、ブランド力が活かせるので、日本ではソニーが健闘しています。しかし、ソニーでさえ、テレビは長いリストラを乗り越えて利益が出せるようになりましたが、スマホは赤字です。パナソニックでもテレビは赤字ですので、徐々に低価格品で勝負してくる中国勢にシェアをとられていく可能性があります。

垂直統合型のシャープはすでに鴻海精密工業の傘下に入っています。

このようなディスプレイ業界において、JOLED単独でテレビとスマホ分野で大きなシェアを獲得することは難しいとの判断に至ったのでしょう。

JOLEDが選んだTCL CSOTとは?

TCL CSOTは、大型液晶パネルで世界6位、中国勢の中では2位のパネルメーカーです(*2018年金額ベースのシェア)。大型液晶パネル事業からは、サムスンとLGが撤退を表明していますので、近い将来にまず世界4位に、さらに台湾勢のAUOとイノラックスも追い抜いて2位になる可能性が高そうです。

親会社のTCLは出荷台数ベースで世界2位のシェアを誇るメーカーです(*2018年シェア)。液晶パネル事業については、すでにコモディティ化しており、前述のように中国勢がシェアを伸ばし続けています。中国テレビメーカーは、国内での液晶パネルの調達を進めていくと予想され、中国以外の国の液晶パネル事業および液晶テレビ事業はさらに苦しくなる可能性が高そうです。

韓国勢は、すでに大型液晶パネル事業からは撤退を表明し、LGは有機EL、サムスンはQD-OLEDに注力しようとしています。中国勢もテレビ用有機ELパネルおよび有機ELテレビにも投資をし、キャッチアップしてくると予想されます。このように考えると、JOLEDが手を組むパートナーとしては、他にあまり選択肢は無かったのかもしれません。

気になるのは今後のJOLEDの行く末です。ディスプレイ分野で、このように資本参加を受け、技術をライセンスする形態で中長期的に成功を収めた事例を知りません。ディスプレイ業界は、日本から花開き、韓国・台湾勢のキャッチアップを受け、その後は中国勢に覇権を握られる歴史をたどったので、そもそも長期的な成功をした事例がないのかもしれませんが・・・。

技術供与・ライセンスという形態では、主要な特許の有効期限が限度で、本格的に事業が立ち上がる頃には残り数年ということが多いようです。そして技術供与して相手を育て、結局は相手に主導権を握られることが懸念されます。

JOLEDは印刷方式の材料と装置を押さえた上で、強い立場で契約をかわそうとしているようですが、資本参加を受けることになりますので、今後の展開に注目です。TCLの成功とともに売上・利益を伸ばしていけるのか?それとも技術・ノウハウを奪われてしまうのか?難しい状況での舵取りを要求されるでしょう。

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JOLEDは印刷方式有機ELの量産を開始!

中国で巨大な液晶パネル工場が本格稼働し、供給過剰と価格低下に多くのメーカーが苦しめられる中、先行するメーカーは有機ELなどの付加価値が高いディスプレイパネルにシフトし始めています。有機ELパネルの製造においては、日本の最後の砦ともいえるのがJOLED。独自の印刷方式で量産を開始しました。その戦略と勝算について解説します。

JOLEDは、2017年末から独自の印刷方式により有機ELパネルのパイロットラインでの生産を開始しました。G4.5(730mm×920mm)の基板で、月産2300枚規模です。これまでに21.6型4K有機ELパネル(204ppi)がソニーの医療用ディスプレイに、さらにASUSのProArt PQ22UC、EIZOのFORIS NOVAにも採用されています。

最近は基板ベースで月産2300枚と、パイロットラインの生産能力ギリギリまで順調に増えていたそうです。そのような状況の中、2019年11月に石川県能見市に世界初の印刷方式による中型・高精細の有機ELディスプレイの量産ラインの稼働が開始されました。基板サイズG5.5(1,300×1,500mm)、月産2万枚(ガラス基板投入ベース)の生産能力です。画素数は4K(3840×2160画素)でパネル寸法は最大32型です。

後述するような印刷方式の特徴を活かした中型サイズの有機ELディスプレイで、順調に顧客を獲得しています。蒸着方式では生産し難い中型に狙いを絞った戦略が功を奏しているようです。このまま順調に成長していけるのでしょうか?以下にさらに詳しくみてみましょう。

JOLEDの印刷方式有機EL事業の戦略

JOLEDの有機ELディスプレイ事業の最大の特徴は「印刷方式」にあります。現状では、スマホなどの小型有機ELディスプレイでは、蒸着でRGB(赤色・緑色・青色)の画素を塗分けて製造するサムスンが圧倒的に強いです。また大型テレビ用では、蒸着でRGB層を積層し、カラーフィルターでRGBの画素を形成するLGが圧倒的に強いです。さらにこれらの方式も、中国勢が猛烈にキャッチアップしてきます。

このような厳しい状況で、JOLEDが量産を始める印刷方式では、前述の2つの蒸着方式では作り難い中型に狙いを定めています。サムスンの蒸着によるRGB塗分け方式では、メタルマスクを使用するために大型化が困難です。LGのカラーフィルター方式では大型化が可能で、もちろん中型も作ることができますが、カラーフィルターを使用するために低消費電力化や色純度、中間色の表現力に課題があります。つまり、JOLEDの印刷方式ならば、RGB塗分けによってカラーフィルターを使用せず、高画質を実現でき、さらに中型から大型まで製造できるわけです。

有機ELにはTFTも重要です。小型有機ELではLTPS(低温ポリシリコン)が使用され、高い性能を発揮していますが、LTPSは大型化が難しいです。JOLEDでは酸化物TFTの開発を行い、これを使用することで大型化を可能にしています。つまり、印刷方式と酸化物TFTの両方が大型化には必要なわけです。

JOLEDとしては、設備投資がかかり、生産数量が少なく、スケールメリットが発揮し難い事業の立ち上げ時に、競合のサムスンとLGなどが参入し難く、勝てる可能性が高い中型に注力する戦略を選んだわけです。テレビなどの大型に関しては、自ら投資・製造することを避け、希望するメーカーに製造装置や技術をパッケージにしてライセンスする戦略です。

現時点では、前述のようにソニーの医療用ディスプレイに採用されるなど、プレミアムなハイエンドモニターとして順調なスタートを切っています。戦略通りと言ったところでしょう。

JOLEDの印刷方式有機EL事業の勝算は?

LGは大型テレビ用有機ELパネル市場でほぼ独占的なシェアを占めており、テレビメーカーからの要請に応えきれないほど供給がひっ迫しています。テレビメーカーも大型でハイエンドのモデルほど利益を出しやすいので、当面は大型有機ELパネルの生産増強に注力するでしょう。JOLEDとしては、その間にハイエンドのディスプレイとして中型ディスプレイの販売台数をどこまで伸ばせるのかが重要です。

量産ラインの稼働率を上げ、生産した中型有機ELディスプレイを売り切ることで、設備の償却を進め、スケールメリットを出し、利益を出せるようになるでしょう。他社も印刷方式の研究開発を進めていますので、競合品が登場するまでにどれだけ生産量を伸ばせるかによって事業の成否が決まるでしょう。

また量産ラインの歩留まり向上も重要です。当初は歩留まりを懸念する声もありましたが、パイロットラインでは歩留まりの目標値に達したようです。その経験を積んだ上での量産ラインのスタートですので、ある程度期待しても良いのではないでしょうか?

有機EL材料を供給する住友化学および製造装置を開発するパナソニックプロダクションエンジニアリングとSCREENファインテックソリューションズとは、排他的な契約を交わしており、JOLEDと協力して希望するメーカーに技術をライセンスする戦略となっています。ディスプレイ分野では、材料と製造装置をそれらのメーカーが海外に拡販したことが、海外勢のキャッチアップを容易にしました。JOLEDも技術を囲い込むだけではなく、契約の下にライセンスしていくため、海外勢もキャッチアップしてくると予想されますが、デファクトをとりながらある程度の影響力を維持することができると期待されます。

JOLEDの戦略がある程度成功すれば、有機EL分野で再度日本勢が主導権を握れる時が来るかもしれません。

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SID2019で印刷方式有機ELを複数社が展示!

世界最大のディスプレイの国際会議SID Display Week 2019が米国サンノゼで開催されました。展示会が併設されており、世界の有力メーカーから試作品の展示がありました。注目のインクジェットによる印刷方式の有機ELディスプレイの展示がありましたので紹介します。

スマホ用の中・小型有機ELディスプレイは、韓国サムスンが世界をリードしています。大型テレビ用の有機ELディスプレイは、韓国LGがほぼ独占状態です。これらはいずれも蒸着方式により製造しているもので、蒸着するための真空プロセス・装置を必要としており、生産ラインに多額の投資が必要です。

インクジェットによる印刷方式が注目されているのは、インクジェットプリンターのような方法で赤・緑・青のサブピクセルを塗り分けることができ、真空プロセスが不要なため、製造装置が簡単になり、大小様々なサイズのパネル製造に柔軟に対応できるためです。また有機EL発光材料などの利用効率が高いことも魅力です。

印刷方式により、これまでの蒸着方式よりも高効率・低コストで同等の以上の性能の有機ELパネルを製造・販売するようになれば、いわゆる「ゲームチェンジャー」として有機ELパネル産業界の勢力図を塗り替える可能性があります。それ故、各社、必死で研究開発に取り組んでいるわけです。

SID Display Week 2019の展示会では、印刷方式の有機ELでトップを走る日本のJOLEDと、中国のCSOTとTianmaが展示を行っていました。

SID2019でのCSOTとTianmaの印刷方式有機EL

CSOTが展示したのは、印刷方式で作った31インチの大型有機ELパネルで、解像度は4Kです。トップエミッション構造を採用し、画素密度は144ppi、バックプレーンには酸化物半導体IGZOのTFTを使用しています。コントラストは10万対1、輝度は100cd/m2、色域はNTSC比100%、フレームレートは60Hzです。

Tianmaが展示したのは、4.92インチのスマホ用の小型パネルで、解像度は1728×972、画素密度が403ppiです。インクジェットの印刷方式では難しいとされる高い画素密度を実現しています。

十分に注目を集めるだけの内容のある展示です。しかし、消費電力や耐久性などについては、詳細な情報は開示されてなく、印刷方式の有機ELの弱点とされるこれらの特性については不明です。

いずれにしても中国メーカーから2社も印刷方式の有機ELパネルが展示されたことが衝撃です。

SID2019でのJOLEDの印刷方式有機EL

印刷方式の有機ELは、日本のJOLEDが世界に先駆けて製品化したものであり、現時点でも先頭を走っていると考えて良いでしょう。展示されていた有機ELディスプレイも非常に美しいものでした。以下の写真は、展示されていた27インチ4K OLEDで、画素密度164ppi、コントラストは100万対1、色域はsRGBu’v’比130%、バックプレーンはLTPS、フレームレート60Hzです。

また以下の写真は21.6インチ4K OLEDでフレキシブルなタイプです。

さすがに前述の中国メーカーに比べて「一日の長」があるような印象です。しかし、そのJOLEDでさえ、「技術ライセンスする」という方針を公表しています(*詳細はこちらの記事「有機ELの印刷方式の製造装置はどこが作っている?JOLED?」をご参照ください)。この方針は、JOLEDが他社を技術的にリードしている状態をキープすることで初めて意味を持つものです。前述のように中国メーカーがキャッチアップしてきている状況では、「技術ライセンス」を早く実施して行かないと、技術的な差が縮められ、意味をなさなくなってしまう日が近い将来に来る可能性もあります。本当にディスプレイの業界の研究開発競争の熾烈さを感じます。

まとめ

JOLEDがTCL CSOTと資本業務提携契約を締結したこと、JOLEDの印刷方式の戦略と勝算について解説しました。量産が始まりましたので、今後、販売状況、事業の状況などがある程度明らかになると思います。ここから数年間、ある程度戦略通りに進めば勝機が見えてくるかもしれません。

ジャパンディスプレイとJOLEDは、日本政府が関与した日本のディスプレイ業界の最後の砦です。どのような将来が待っているのか多くの人が関心を持って注視しています。

▼印刷方式の有機ELの情報についてはこちら▼
印刷方式の有機ELのことがわかるガイド

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