パナソニックの車載電池事業は成功する?トヨタとテスラとは?

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温室効果ガス削減、大気汚染改善などのために、電気自動車の普及が期待されています。欧州や諸外国においても、ガソリン車、ディーゼル車を減らし、環境負荷の低い自動車の普及を促す規制等が導入されています。自動車産業は、それぞれの国の経済・雇用などへの影響が大きいため、日本勢が強いハイブリッド車(HEV)をスキップして電気自動車の普及を目指す国が多いようです。

現時点で電気自動車の心臓部である電池は、リチウムイオンバッテリー(LIB)が主流です。リチウムイオンバッテリー(リチウムイオン電池)は、日本から生まれ、普及し、大きな産業に成長しました。しかし、大きな市場となるほど国際的な競争が激しくなり、日本勢は韓国勢・中国勢のキャッチアップに苦しめられています。このまま液晶ディスプレイ産業のような運命を辿るのでしょうか?

車載用リチウムイオンバッテリーのシェアトップであるパナソニックについて紹介します。

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パナソニックの車載電池事業は成功する?

パナソニックは、車載用リチウムイオンバッテリー事業に投資を続け、2019年時点でもシェアトップの地位を中国・寧徳時代新能源科技(CATL)と競っているようです。国際的な競争は激化し、中国・比亜迪(BYD)や韓国勢のLG化学、サムスンSDIがこれら2社に続いています。

パナソニックは、車載用リチウムイオンバッテリー事業では、米国テスラおよびトヨタ自動車とそれぞれ密接な協力関係を築いています。これがこの事業の基本戦略となっています。それでも順風満帆とは言えないようです。

米国テスラとは、共同で運営する電池向上「ギガファクトリー」に、約20億ドル(約2100億円)を投資しました。しかし、2017年1月に稼働して以来、テスラ向け電子事業は赤字が続いていました。そして2019年の最後の四半期に黒字化できました。残念ながら、2020年3月には新型コロナウイルスの影響で操業停止となり、また世界的に自動車の販売が著しく減少するという苦境になっています。

パナソニックは、トヨタ自動車と合弁のリチウムイオンバッテリーを生産する会社「プライム プラネット エナジー&ソリューションズ株式会社」を設立し、2020年4月1日から事業を開始しています。トヨタ自動車の公式サイトには以下のように記載されています。

「トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)とパナソニック株式会社(以下、パナソニック)は、2019年1月22日に、車載用角形電池事業に関する新会社(以下、合弁会社)設立に向けた事業統合契約および合弁契約を締結して以降、合弁会社の設立に向けた準備を進めてまいりました。この度、合弁会社「プライム プラネット エナジー&ソリューションズ株式会社」の設立および合弁会社の概要が決定しましたのでお知らせいたします。」

出資比率は「トヨタ(51%)・パナソニック(49%)」となっており、対等の合弁ではなく、トヨタ自動車の傘下に入ったと言えるでしょう。

この戦略の利点は、パートナーと密接な関係を築くことで、大規模投資をして生産した車載用リチウムイオンバッテリーを買い取ってもらえるという点にあります。競合メーカーと価格競争に陥ることに比べれば、ある程度リスクヘッジできる戦略と言えます。

パナソニックが車載電池事業に注力する理由は?

リチウムイオンバッテリーは、ノーベル化学賞を受賞した吉野彰氏で知られているように、旭化成らの日本企業が1980年代初頭から研究開発を進めてきました。そして世界で初めて小型リチウムイオンバッテリーを量産したのがソニーで、1991年に実現しました。その後、ノートパソコン、スマホなどのモバイル機器には欠かせない高性能バッテリーとして広く使われています。

民生用機器の重要部品は、日本で花開くとすぐに韓国勢が猛烈にキャッチアップしてくることが多いのですが、このリチウムイオンバッテリーについてもLG化学、Samsung SDIの韓国勢の猛攻があり、ソニーのシェアは急激に減少しました。その後、ソニーは電池事業を村田製作所に売却しています。

パナソニックは、民生用のリチウムイオンバッテリー事業でも検討していますが、韓国勢に加えて中国勢も成長しており、徐々にシェアを失う厳しい状況にあります。

パナソニックは、電池についての高い研究開発力を持っていますし、同様に高い研究開発力を持っていた三洋電機の電池事業も買収していますので、「強い事業」としてリチウムイオンバッテリー事業に注力するのは理解できます。しかし、同様に強かったプラズマパネル事業とテレビ用液晶パネル事業で巨額の赤字を出して撤退したことを考えると、中期的に韓国勢と中国勢のキャッチアップに対抗し、勝てる見通しがあるのかという点が重要となります。

そのポイントの1つが、電池の信頼性・安全性ということにあるようです。液晶パネルの事業と比較するとわかりやすいのですが、先行するパナソニックは、キャッチアップしてくる韓国勢・中国勢と技術的な差別化ができるだけのリードを維持しなければなりません。

しかし、これまでの歴史を見ても、キャッチアップする方が難易度が低く、次第に性能的にも近いものを作れるようになり、後から大規模で最新鋭の製造設備を導入した後発メーカーの方がコスト低減でも有利になってくることが多いです。最初は歩留まりが低くても、人件費、土地代、電気代など諸条件が有利でさらに国家が助成するような中国では、良品をピックアップして販売するだけでも価格競争力が高くなることが多いです。

液晶パネル事業で起こったこのようなことが、リチウムイオンバッテリー事業でも起こってしまうのではないかということが懸念されるわけですが、車載用リチウムイオンバッテリーについては、極めて信頼性・安全性の要求水準が高いことがパナソニックに有利な点のようです。

以前、スマホやノートパソコンのリチウムイオンバッテリーが発火する事故が報告され、飛行機への持ち込みが制限されることがありました。確かに飛行中の機内で発火することを想像すると恐怖です。それでも民生用のこれらのリチウムイオンバッテリーの危険性は、車載用のものに比べるとかなり低いです。

最大の違いは、車載用のバッテリーはノートパソコンやスマホのバッテリー容量と比べると桁違いに大きい点です。自動車ほどの重要のものに人や荷物を載せて走行するので、当然のことながら大きな電力が必要で、さらに航続距離を長くするために多くのバッテリーを搭載します。これが走行中に発火したら大変なことになりますので、自動車メーカーとしても責任を問われるからです。

このような特性の車載用リチウムイオンバッテリーは、「やすかろう、悪かろう」的なものは許されないわけです。


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パナソニックが車載電池事業のリスクは?

前述の車載用リチウムイオンバッテリーの高い信頼性・安全性を維持することと、自動車メーカーとパートナーシップを構築することがパナソニックの基本戦略です。これで中期的にも安泰なのでしょうか?

現時点では、パナソニックにおいて車載用リチウムイオンバッテリー事業は大きな利益を上げられていません。同社は「モノ作らぬメーカー」を標榜している中で、この事業は間違いなくバッテリーを大量生産する事業です。業績が伸びなければ社内の位置付けが変更になる可能性はあります。

テスラの中国新工場建設においても、パナソニックは一緒に中国に工場を建設するという選択はしていません。

トヨタとの合弁においても、出資比率の過半数をトヨタに許したことからも、リスクヘッジを考えているのかもしれません。

すでにテスラと共同運営していた米国の太陽電池生産からは、2020年9月に撤退することを表明しています。

密接なパートナーシップは、両者の関係が蜜月であれば良いのですが、何らかの事情により蜜源関係が続かなくなった場合は、厳しい状況になる可能性があります。

また技術的には、全固体電池などのリチウムイオン電池の次に来ると言われる次世代電池の研究開発も活発で、これらが車載用に実用化した際には短期間に市場シェアが激変する可能性もあります。これはハイテクの宿命ではありますが、継続した研究開発と投資が必要です。

直近では、電気自動車の普及が一番のリスクかもしれません。現状では航続距離、充電時間などの点での弱点が残っており、価格も高いです。世界的にも一時期の電気自動車の盛り上がりが落ち着きつつあるようです。この点でも全固体電池の実用化が必要なのかもしれません。

まとめ

パナソニックの車載電池事業について紹介しました。日本から生まれて花開いたリチウムイオンバッテリーですので、産業的にも日本勢に頑張って欲しいです。

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