QDレーザのレーザ網膜走査型眼鏡に注目!普及する?

テクノロジー

日本のベンチャー企業である株式会社QDレーザは、「レーザ網膜走査型眼鏡」を開発し、医薬品医療機器総合機構(PMDA)から世界で初めて医療機器として2020年1月28日に承認を取得しました。従来の眼鏡やコンタクトレンズとは何が違うのでしょうか?

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QDレーザがレーザ網膜走査型眼鏡を開発

レーザ網膜走査型眼鏡とは何でしょうか?人間は目で何かを見ようとした時に、ピントを合わせて、眼の中の網膜上に映像を結像させます。網膜に入った光は、視細胞で電気信号に変換され、視神経を経由して脳に伝えられます。

近視、遠視、乱視、老視などになると、なぜものがよく見えなくなるかというと、眼のピントを調節し、網膜上に像を映すことができないからです。そのため眼鏡やコンタクトレンズを使って、網膜上にピントが合うように矯正する方法が一般に行われています。

目的は網膜上に目で見た映像をピントを合わせて映すことですので、これが達成できるならば他の方法でも良いわけです。QDレーザが開発したのは、レーザーを使って網膜上を操作し、映像を映します。

テレビなどのディスプレイでは、画素が縦方向と横方向に規則正しく、多数並んでいます。例えば横方向に画面サイズに合わせてレーザー光を当てて行き、1行走査したら次は1段下の行を走査するというように順番にすべての画素位置をレーザーで操作することができます。1画面分走査し終えたらまたはじめに戻るというようにすれば、連続的に画面を操作していくことができます。

レーザーは変調をかけて強度を制御できますので、操作している間に各画素の位置で強度を調節すれば画像を描くことができます。さらに赤・緑・青(RGB)の光の3原色の色のレーザーを組み合わせて使えばフルカラーの映像を表示できます。これが走査型レーザーディスプレイの原理です。最近イベントなどで使われるレーザープロジェクションも同じ原理です。

レーザ網膜走査型眼鏡では、レーザー光を直接人間の網膜に照射して走査するわけです。医療機器として承認された眼鏡としては世界で初めてです。

QDレーザのレーザ網膜走査型眼鏡は安全なの?

それにしてもレーザー光を眼に直接照射しても大丈夫なのでしょうか?結論から言いますと、大丈夫です。大丈夫でなければ医療機器としての承認が得られるはずがありません。それでも不安を感じる方がいらっしゃると思いますので、少々解説します。

一般にレーザーポインターなどからのレーザーを人に向けてはいけませんし、直接覗き込んでもいけません。レーザー光の光エネルギーによって眼を負傷する危険性があります。

レーザーポインターからの光をスクリーンなどに照射すると確認できますが、レーザー光は一般に指向性が高く、かなり離れたスクリーンでも小さな点状に照射できます。それ故にレーザーポインターとして使用できるわけですが、これは小さな照射面積内に高い密度で光エネルギーを集めることができることを示しています。

一般に光による眼などへの影響を議論する場合は、単純に光源からの光出力ではなく、照射される場所の光エネルギー(パワー)密度に注目する必要があります。LED照明を直視しようとしても眩しくて直視できませんが、例えば60WのLED電球でも光は広い角度方向に拡散しますので、照射面上での光パワー密度は低くなります。さらに放射状に配光された場合は、距離が離れるほど格段に光パワー密度が下がることは、球の表面積が半径の2乗に比例することからも理解できます。

ところがレーザー光の場合、出力が1mWでも、わずか数mm程度の直径の円の中に集められていることが多く、光パワー密度は高くなります。さらにそれが数十m離れてもほとんど広がらないため、光パワー密度が照射距離が大きくなってもほとんど下がりません。

しかし、人間がものを見るためには光が目に入らなければなりません。光が目に入ること自体が問題なのではなく、安全なパワー密度を越えた光が眼に入ることが問題なのです。

つまり、重要なことは、安全な光パワー密度以下になるようにレーザーの出力を抑えれば良いわけです。QDレーザーでは、もちろん安全なレベルまで光パワー密度を抑えています。

一般に「光」と言えば人間の眼で見ることができる波長の光、すなわち「可視光」を指します。しかし、科学技術的な議論の場では、紫外線や赤外線も含めることがあります。基本的にはいずれも電磁波であり、波長が異なるだけで、可視光に近接しているためです。電磁波では、波長が短くなると、電磁波そのもの(フォトン)の持つエネルギーが高くなります。よく知られているように、波長の短い紫外線の場合は、光パワー密度を抑えても人間の身体に何らかの影響を与えることがあります。

可視光の場合は一般に問題になりませんが、紫外線およびさらに波長の短い電磁波の場合は、光パワー密度が低くてもダメージを受ける可能性があることは参考までに記しておきます。


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QDレーザのレーザ網膜走査型眼鏡はなぜ注目されるのか?

QDレーザのレーザ網膜走査型眼鏡にはどのような可能性があるのでしょうか?これから広く普及するのでしょうか?

正直なところ、事業としてどれぐらいの可能性があるのかまだよくわかりませんし、極めて有望であったとしても実績が積み上げられるまでには数年以上の時間が必要です。それでも今注目したいのは、これまでの眼鏡およびコンタクトレンズとは異なる原理に基づいた機器であるからです。

眼鏡は本当に偉大な発明で、裸眼ではものをよく見ることができない人の視力を矯正し、非常に役に立っていることは周囲の眼鏡を使っている人を見ればすぐにわかります。コンタクトレンズにしても同様です。これらはレンズによって光を屈折させることによってピントを調節するという原理に基づくものです。

眼鏡とコンタクトレンズの研究開発の歴史は長く、使用されてきた実績も豊富です。それだけに技術的に成熟しているのですが、それでもいくつかの欠点があります。従来のものとまったく異なる原理に基づく機器ならば、これらの解決できなかった欠点が克服できるかもしれないため、注目するわけです。

例えば、全盲ではないけれども視力が弱く、眼鏡による矯正も困難な方々がいらっしゃいます。このようなロービジョンの方々の視覚の支援に役立つと期待されています。

またレーザーで走査するこの方式は原理的にはフォーカスフリーになりますので、老視(老眼)矯正用の遠近両用眼鏡としても期待できます。一般的な遠近両用眼鏡は、眼鏡レンズの上側が遠くを見る時用、下部が近くを見る時用になっています。これも慣れないと使い難いですし、下側方向で遠くを見ようとすると困ります。眼鏡を2つ用意して、遠くを見る時と近くを見る時で付け替えたりする人もいますが面倒です。レーザ網膜走査型眼鏡ならばどちらにも対応できます。

まとめ

QDレーザのレーザ網膜走査型眼鏡について紹介しました。レーザー光を目に照射するというと怖い感じもするのですが、私は以前QDレーザーが開発したHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を体験したことがあり、レーザー光で網膜を走査しても大丈夫ということを身をもっと確認しました。将来は普及し、当たり前の技術になるのかもしれません。

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