印刷方式の有機ELのことがわかるガイド

印刷有機EL

日本の有機ELパネルを製造会社であるJOLEDが、印刷方式による有機ELパネルの生産ラインを完成させたと発表されました。2020年の量産開始を目指すとのことです。液晶ディスプレイを代表とするフラットパネルディスプレイのパネル事業は、韓国勢の猛攻に遭い、日本勢が衰退してしました。さらにその韓国勢も中国勢の猛追を受けています。そんな業界の状況にある現在、なぜ日本国内で日本企業による有機ELパネルの量産がスタートしようとしているのでしょうか?印刷方式による有機ELパネルについて以下にまとめます。

スポンサーリンク

JOLEDが有機ELの印刷方式による量産を開始!

2019年11月25日に、JOLEDは世界初の印刷方式による有機ELディスプレイ量産ライン稼働開始と発表しました。石川県能美市にある同社の能美事業所に最新の生産ラインが完成しました。基板サイズG5.5(1,300mm×1,500mm)、月産2万枚(ガラス基板投入ベース)の生産能力を備えています。

JOLEDとは、パナソニックとソニーの有機EL事業を統合して2015年1月に発足した会社で、印刷方式の有機ELに特化しています。これまでにも試作ラインで少量生産を行い、ソニーの医療用モニターなどに採用されていました。いよいよ本格的な量産に向けて事業を進めようとしています。現在の主要な株主は、官民ファンドのINCJ(35.7%)、JDI(27.9%)、デンソー(18.1%)です。パナソニックとソニーからの出資比率はこれらに比べて少ないです。

有機ELディスプレイは、2007年にソニーが世界初の有機ELテレビを発売しています。しかし、その後、サムスンが巨額の投資を行い、スマホ用の高画質有機ELパネルではトップシェアを占めています。またテレビ用ではLGがほぼ独占状態です。

JOLEDが進めるのは印刷方式で、プリンターのようにインクジェットを使って赤・緑・青(RGB)の画素を塗分けて製造します。蒸着方式では困難なサイズのものを狙いますが、テレビ用の大型ではなく、中型・高精細のパネルに注力します。テレビ用の大型パネルは、海外メーカーに印刷方式の技術供与で手数料を稼ぐビジネスモデルを模索するとのことです。

印刷方式のメリットは、様々なサイズに柔軟に対応してRGBの塗分けができ、発光材料のロスを小さくできるため製造コストを低くできることです。しかし、量産はこれから始まるところで、当初は歩留まりも低くなると予想されることから、強みである製造コストの低減をどの程度発揮できるのかまだよくわかりません。

生産ラインへの投資の回収、生産した有機ELパネルの販路開拓など、JOLEDにとっては正念場を迎えることになるでしょう。

関連記事:JOLEDの印刷方式有機ELの戦略と勝算は?歩留まりは上がる?

JOLEDが中国パネルメーカーと資本業務提携

JOLEDがTCL CSOT(TCL China Star Optoelectronics Technology Co., Ltd.)と資本業務提携契約を締結したことが2020年6月19日に発表されました。中国ハイテク企業TCL Tech傘下のディスプレイパネルメーカーです。

JOLEDの印刷方式による有機ELパネルの製造が、いよいよ大型テレビ向けに動き出すようです。TCL CSOTは、大型液晶パネルで世界6位、中国勢の中では2位のパネルメーカーです(*2018年金額ベースのシェア)。近い将来はBOEに次いで世界2位になる可能性が高いです。今後は印刷方式を切り札に、テレビ向け有機ELパネルのシェア拡大を狙うようです。詳しくは以下の記事で紹介しています。

関連記事:JOLEDがTCL CSOTと資本業務提携!テレビ用大型有機ELへ!勝算は?

スポンサーリンク

有機ELの印刷方式の製造装置はどこが作っている?JOLED?

有機ELの製造方法の大きな改善に向けて印刷方式が注目されています。これまでのディスプレイ産業の歴史を振り返っても、最新鋭の高効率な製造装置の研究開発が業界の勢力図に大きな影響を与えてきたと推測されます。現時点で有機ELの印刷方式の製造装置は、どの企業が開発しているのでしょうか?

印刷方式による有機ELは、パナソニックとソニーの流れを引き継いだJOLEDが中心となって進めてきていますので、JOLEDを中心としてグループが印刷方式の製造装置を開発していることは間違いありません。試作ラインを経て、世界初の量産ラインの完成まで到達していますので、世界の最先端に位置しています。

JOLEDを中心としたグループ以外では、東京エレクトロンが有機ELの印刷方式の製造装置の販売を開始したと2018年10月16日に同社のサイトでアナウンスしました。台湾のAU Optronics(AUO)などの海外メーカーは、東京エレクトロンから製造装置を購入したことを明らかにしています。詳しくは以下の記事で紹介しています。

関連記事:有機ELの印刷方式の製造装置はどこが作っている?JOLED?

有機ELを印刷方式で作る時の発光材料は?住友化学が強い?

現時点で販売されているほとんどの有機ELディスプレイは、蒸着方式で製造されています。蒸着プロセスは、減圧して真空にしたチャンバー内部で、有機化合物の発光材料を分子レベルで飛ばして、ターゲットにぶつけて塗っていきます。したがって、真空下で分子レベルで飛ぶように低分子量である必要があります。

一方、インクジェット方式では、真空下で飛ばす必要が無いため、低分子量である必要はありません。一般にインクの溶剤に溶けやすいように、分子設計で溶解性を調節しやすい高分子系発光材料が用いられます。高分子系発光材料では、1つの分子内に発光性・電子輸送性・正孔輸送性を有する構造をすべて組み込み、これらのバランス(比率)も調整できます。これが高分子化学の優れている点です。

高分子系発光材料については、住友化学やメルクが販売しているようです。国際会議の発表論文からも住友化学の高分子系発光材料は優れていることが分かります。詳しくは以下の記事で紹介しています。

関連記事:有機ELを印刷方式で作る時の発光材料は?住友化学が強い?

まとめ

JOLEDにより、いよいよ印刷方式の有機ELパネルの量産が始まろうとしています。印刷方式によるメリットを蒸着方式などと比べて紹介しました。また製造装置や、印刷方式で参入を図る中国勢の動向も紹介しました。

スポンサーリンク

コメント

タイトルとURLをコピーしました