世界中で海洋に流出したプラスチックのごみ問題が深刻になっています。海はつながっていますので、どこかの国から海に流出しても国際的な問題となります。このままでは海の生物の量よりもプラスチックの量の方が上回る可能性が高いとされています。生分解性プラスチックに期待が寄せられていますが、それを使えば解決できるのでしょうか?
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生分解性プラスチックとごみ問題についてのまとめ
生分解性プラスチックを使えばプラスチックごみ問題を解決できる?

実は問題はそれほど単純ではありません。正しい判断ができるように、もう少し生分解性プラスチックとプラスチックごみ問題について理解を深めましょう。
下記に詳しく解説するように、この問題には大きく分けて2つの視点があります。一つはプラスチックごみによる環境問題、もう一つはプラスチックのリサイクルの問題です。もちろんこれらは密接な関係がありますので、両方の視点が一緒になって論じられることもありますが、「プラスチックごみによる環境問題をどのように解決するのか?」と「資源を有効利用できるようにプラスチックをリサイクルする」という視点があるということを理解すれば良いでしょう。
さらに詳しく見ていきます。
生分解性プラスチックを使ってもプラスチックごみは減らない?

日本のプラスチックのリサイクルによる有効利用率は、2016年に84%に達しています。このように使用済みプラスチックを回収し、有効利用できれば理想的なのですが、この有効利用されていると計算されているプラスチックのある割合は、マテリアルリサイクルとして中国などの海外へ輸出されていました。ところが中国などのこれらの国々が、廃プラスチックの輸入禁止措置を取り、大量のプラスチックが滞留する事態となりました。現在は、廃プラスチックの保管場所さえ難しい状況です。
また回収からリサイクルというルートに乗らずに、環境中に放出されてしまう廃プラスチックはゼロにはできず、ある割合で発生します。これらが身の回りに散乱し、特に河川などを通じて海へ流れ込むものもあります。特に中国や東南アジア諸国では多いようです。
生分解性プラスチックならば、使用後に回収せずに、そのまま環境中に放出して良いと誤った認識を持たれると事態を悪化させることとなります。廃プラスチックの回収率を上げることが、最重要な課題となります。
生分解性プラスチックと言っても、コンポストなどの微生物が多い条件下で保管することで、約1週間程度で分解されますが、通常の環境下では安定で長期間そのままになっているためです。人間が日常的に使用する量のプラスチックを再分解性プラスチックに代替して、そのまま環境中に廃棄してしまったら、周囲がプラスチックごみだらけになってしまいます。
また生分解性プラスチックでも、土壌中などで分解される特性のものが多く、必ずしも海水中で分解されるタイプのものではありません。海水中で分解されない生分解性プラスチックならば、通常のプラスチックごみと同じ結果になります。
廃プラスチックを有効にリサイクルするためには、プラスチックの種類ごとに分類することも重要です。現在はPETボトルなどの分類・回収が進んでいます。これに生分解性プラスチックの分類を追加すると煩雑になりますし、流通量が少ない場合は、分類作業を広く周知できないでしょう。結果として、生分解性プラスチックを他のプラスチックと一緒にして焼却することになるとほとんど意味がありません。
このように単純に従来のプラスチックを生分解性プラスチックに代替しても、ごみは減らないことは理解できます。
プラスチックごみ問題を改善するには?

まずレジ袋やプラスチックストローの使用を取り止める店舗が増えつつあります。特に1回使用してすぐ捨てるようなものは、使用しないで済めば良いでしょう。
使用済みプラスチックの回収率を上げることも進んでいます。特に中国などの東南アジア諸国では、河川に投棄されてそれが海まで流れ込むケースがあり、その調査を開始しているようです。多くの市民の協力が必要なため、回収率の低い国では、改善に時間がかかるでしょう。
生分解性プラスチックは、農業用のマルチフィルムなどのように、使用してそのまま分解されるような用途のものは非常に優れています。食品のパッケージなどに使うものは、それらを回収してコンポストに入れるルートが確立できれば生分解性プラスチックが活躍できそうです。
まとめ
生分解性プラスチックで従来のプラスチックを代替しても、簡単にはごみ問題は解決しないということを紹介しました。今後の研究開発と生分解性プラスチックの回収システムの確立に期待したいです。
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