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日本の液晶と有機ELディスプレイ産業は衰退!材料メーカーの将来は?

投稿日:2019年7月28日 更新日:

日本で生まれ、大きく成長した液晶ディスプレイ産業は、韓国勢との戦いに破れ、衰退しました。現在成長しつつある有機ELディスプレイ産業については、日本勢は主導権を握ることもできていません。また韓国勢にしても中国勢の猛攻を受けて窮地にあります。そんな中で健闘していた日本の材料メーカーはどのような状況なのでしょうか?

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日本の液晶と有機ELディスプレイ産業は衰退した

ブラウン管のテレビやモニターを使っていた世代の方々は、現在に至るまでのディスプレイの変遷を直接体験しているかもしれません。私も、最初はNECの98noteの白黒液晶ディスプレイから、本格的な液晶ディスプレイを使い始めました(*それ以前の液晶電卓は除きます)。ノートパソコンはそれから数年でカラー表示ができる液晶ディスプレイが主流になり、さらに2001年にシャープの液晶テレビ「アクオス」が発売されました。特に2000年代の液晶テレビの大型化・高画質化は凄まじく、ほとんどの一般ユーザーは何の不満も感じないレベルのものになっています。さらに4K/8K放送も始まり、それらが視聴できる液晶テレビも発売されています。

スマホの登場と、そこに搭載される液晶ディスプレイと有機ELの進歩も目を瞠るものがありました。現在のiPhoneのディスプレイを見て、画質に不満を感じる一般ユーザーはほとんどいないでしょう。

このような素晴らしいディスプレイ産業の礎を築いた日本の電機メーカーは、早くも2000年代から凋落が始まります。その原因はいろいろなところで様々に論じられていますが、技術が成熟してきたこと、製造装置が装置メーカーから販売されていること、巨額の投資競争となったこと、などはその要因として挙げられるでしょう。

多くの日本の電機メーカーは、ディスプレイ産業の主役であるパネル製造が撤退しました。純粋な日本勢としては、日立製作所、東芝、ソニーなどの中小型液晶部門を統合したジャパンディスプレイとして、ソニーとパナソニックの有機ELディスプレイ部門を統合したJOLEDとして残っているのみです。シャープの大型液晶パネル工場は日本国内にありますが、台湾の鴻海精密工業の傘下に入っています。

さらにこのジャパンディスプレイが経営危機であることは、大きくマスコミ等で報道されています。

液晶テレビ事業としては、ソニーとシャープが頑張っていますが、シャープや東芝は海外勢の傘下に入りました。ソニーのディスプレイ事業は長年低迷し、長期間のリストラを続けてきましたが、最近、ソニー全体として過去最高益を更新するなど、復活の兆しが見えています。ディスプレイパネルなどの主要な部品・部材は外部から調達し、映像エンジンなどのソニーの技術力が発揮できる部分で勝負しているようです。

電機メーカーがこのような苦境にある中で、日本のディスプレイ部材・材料メーカーは健闘してきました。現在はどのような状況なのでしょうか?

日本のディスプレイ部材産業の状況は?

日本のディスプレイ部材産業は、ディスプレイパネルやテレビ、スマホなどの主要なディスプレイ製品に比べると、長期に競争力を維持し、健闘してきたことは事実です。特に冒頭で述べた液晶ディスプレイ産業が立ち上がり始めた1990年代は、ほとんどのディスプレイ部材で大半のシェアを日本勢が占めていました。

日本政府が韓国に対し、感光材(レジスト)、エッチングガス(フッ化水素)、ディスプレイ用樹脂材料(フッ化ポリイミド)の3品目の輸出管理を厳格にするという方針を表明してから、韓国内で日本から輸入しているディスプレイ部材を内製するという方針を韓国政府が表明しました。実はこのような方針は、これまでも「Buy Korea」スローガンなどとともに掲げられています。しかし、今回の状況から見ても、依然として日本からのディスプレイ部材が韓国のディスプレイ産業にとって重要であることがわかります。

それでは日本のディスプレイ部材産業は、これからも強いポジションを維持できるのでしょうか?

これまでの歴史を振り返っても、海外勢は日本のディスプレイ部材産業を狙っており、ある程度は奪い取ることに成功しています。その方法は様々ですが、日本から技術が流出したことが原因となっているケースもあるようです。何らかの形で、海外でディスプレイ部材の製造が始まると、最初は品質等が劣っていても、あらゆる方法で猛烈にキャッチアップし、日本勢を脅かす存在になるケースが多いようです。

例えば、液晶ディスプレイのバックライト用導光板については、かなり早い段階から海外でも生産されるようになりました。射出成形で製造できるタイプのものは、金型図面があれば海外でも製造できるケースが多いためです。日本の射出成形メーカーと取引していたメーカーが、図面を海外へ流したというような話もよく聞きました。海外でより安く作らせるためです。また形あるものはコピーしやすく、製品から形状を計測し、金型を作ることもできます。実際は、最終製品の形状と金型形状は同一ではなく、溶融したプラスチックが冷えて収縮する時のひけや、金型から抜き出すための抜きテーパーなど、いろいろなノウハウがありますが、これらもヘッドハンティングするなどによりキャッチアップできたでしょう。そのため、現時点で同分野で世界的な競争力を維持してる日本企業は極めて少数です。iPhone向けの導光板などの非常に高い技術が要求される用途で、射出成形技術だけでなく、高い光学設計技術を組み合わせることでなんとか競争力を維持しています。しかし、光学設計についても、製品として世の中に出ると、模倣されやすくなるので、特許で守ることができない場合は、短期でキャッチアップされるリスクがあります。

バックライトにはプリズムフィルムが使用されていますが、米国3M社のBEFという製品がもっともシェアが大きかったですが、特許が切れるとともに他社でも製造されるようになっています。そのような優れた製品を創り出せること、特許でそのシェアを守ることに成功していた点では3M社の強さを感じますが、その3M社でさえ、特許が切れれば他社に模倣されてしまいます。これも光学技術を駆使したものですが、プリズムの角度などは顕微鏡でも計測できますし、材料も入手可能なので他社のキャッチアップを防ぎきれないわけです。

日本でも3M社のBEFとは異なる下向きプリズムシートの事業を展開するメーカーがありますが、BEFに比べるとかなり数量が少なく、撤退したメーカーがあります。

次項で、日本勢が強みを持っていた液晶パネル用の光学フィルムについて見てみましょう。

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日本のディスプレイ部材メーカーの将来は?

液晶パネル用の各種光学フィルムも日本メーカーが非常に強い分野です。液晶ディスプレイでは偏光板が使用されます。これはヨウ素を含浸したPVA(ポリビニルアルコール)を一軸延伸したフィルムを偏光子として用い、その両面に偏光子保護フィルムを貼り合わせたものです。片面に偏光子保護フィルムの替わりに位相差フィルムを貼り合わせるものもあります。

偏光板がどの光学フィルムを選んで貼り合わせるのかを決めますので、光学フィルム分野ではある程度強い立場にありました。しかし、かつては偏光子保護フィルムのシェアのほとんどを富士フイルムが持っていたこともあり、他にほとんど選択肢がないために強い立場にありました。そのため偏光板メーカーが競合となる偏光子保護フィルムメーカーを育成したり、その市場を狙って参入するメーカーなどもあり、参入メーカーが増えました。また偏光子保護フィルムの一部を位相差フィルムに代替するようになり、そこを狙った新規参入もありました。

またAppleなどの最終製品メーカーがパネルの部材構成に要望を出すこともあり、偏光板メーカーや光学フィルムメーカーもパネルメーカーを越えて最終製品メーカーに直接売り込むことも普通になりました。

このような流れの中で、光学フィルムに用いるポリマー材料そのものの特性(吸湿性、耐熱性、コストなど)が最終的な差別化要因になることが多くなり、かつてはTAC(トリアセチルセルロース)がほとんどであった光学フィルムも、PET、COC、アクリルなどのそれぞれの特徴ある製品が戦いを繰り広げています。

光学フィルムは、このように富士フイルムが高いシェアを持ちながらも、かつてのような独占という状況からは変わってきています。それでも日本勢が高いシェアを有しており、海外勢が大きなシェアを獲得するまでには至っていません。偏光板事業は、日東電工と住友化学に続く第3の勢力として比較的早くからLG化学が大きなシェアをもっています。その他の韓国勢と台湾勢も偏光板事業を進めていますが、最大の脅威は中国の偏光板メーカーです。中国で大規模な液晶パネル工場が次々と稼働し始め、そこで使う偏光板も中国国内で中国メーカーが生産しようとしています。現状でも日本の偏光板メーカーの利幅は薄くなっており、主にスマホ向けの高付加価値偏光板で利益を上げていたのですが、高級スマホが液晶から有機ELにシフトしつつあり、偏光板の使用枚数が半分になります。ジャパンディスプレイの経営状況も厳しく、ハイエンドのディスプレイパネルの生産がさらに海外にシフトしていくと、日本の偏光板事業の業績は厳しくなると懸念されます。

日東電工の2019年4~6月期の連結決算(国際会計基準)は、純利益が前年同期比40%減の102億円となりました。ハイエンドスマートフォン向けの偏光板やタッチパネル部材が低調でした。これまでのように国内で偏光板などを生産し、海外に輸出するビジネスモデルはこれからは厳しいと判断したのか、中国の偏光板メーカーへ技術供与し、指導料を徴収するロイヤルティビジネスを始めています。これは競合メーカーの成長を促進する結果となり、長期的に視野で自社の競争力を維持するという観点では通常は有り得ない選択と考えられますが、それをせざるを得ない状況ということでしょう。

そのため日東電工については、日本経済新聞などで「「脱スマホ」をけん引する3本の矢」などの取材に基づいた掲載されています。その内の1つが前述のロイヤルティビジネス、2つ目がライフサイエンス分野、3つ目がプラスチック光ファイバーケーブルです。2019年4~6月期の連結決算では、核酸医薬の受託製造をするライフサイエンス事業の営業損益が14億円の赤字でした。プラスチック光ファイバーケーブルについては、まったくの新規事業で、サンプル出荷さえできる状況ではありません。プラスチック光ファイバーケーブルに関しては、すでに長い事業の歴史がある三菱ケミカルおよびAGCでさえ、事業としては低迷しており、決算説明会資料中で触れられてもいません。仮に新しいプラスチック光ファイバーケーブルが開発できたとしても、事業としては未知数です。

このように日本の偏光板のトップメーカーでさえ苦しい状況で、中国の偏光板メーカーが力をつけてくればますます厳しくなるでしょう。そしてその中国メーカーに技術指導をする戦略を採ったことからも、今後の厳しさを感じます。光学フィルムそのものについては、未だに日本勢が強いですが、いずれかのメーカーが撤退とともに事業を海外勢へ売却するなどの動きがあれば、大きくシェアが変動する可能性はあるでしょう。

まとめ

日本のディスプレイ部材産業の状況と今後について紹介しました。ここで触れなかったディスプレイ部材は他にも多数あります。中国勢などが国家戦略として狙ってきた場合は、厳しい戦いが強いられる可能性がります。ディスプレイ部材に限らず、日本は材料分野に強みがありました。最近のAIなどに注力する動向の中で、日本の強みである材料分野で急速に競争力が低下しないことを祈ります。

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