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マイクロLED

SID2019でのTesoro ScientificのマイクロLED製造方法!

投稿日:2019年6月6日 更新日:

世界最大のディスプレイの国際会議SID2019において、マイクロLEDに関する発表が数多く行われました。マイクロLEDディスプレイの性能が優れていることはすでに試作品である程度実証されていますので、その製造コストを下げることに多大な研究開発努力が注がれています。Tesoro Scientificの発表について紹介します。

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SID2019でのTesoro ScientificのマイクロLED製造方法

SID Display Week 2019のMicroLED-TransferのセッションのInvited Paper 18-1として、Tesoro ScientificのCEOのFrancois J. Henley氏から「Evaluating In-Process Test Compatibility of Proposed Mass-Transfer Technologies to Achieve Efficient, High-Yield MicroLED Mass-production」と題して発表がありました。

マイクロLEDディスプレイの製品化の鍵を握る「Mass-Transfer」工程について、同社の技術とすでに公表されている他社の技術を簡潔に比較した表が掲載された、極めて有意義な論文発表です。「Mass-Transfer」工程の現状を知りたい方は、是非ご一読されることをおすすめします。

その論文の内容は詳細であり、さすがにここで詳しく説明することはできませんので、最重要ポイントのみ簡単に説明します。

マイクロLEDディスプレイの製造では、まずエピタキシャル成長で基板上にマイクロLEDを作製します。そこからマイクロLEDを切り出し、最終的な基板上に移します。この工程が「Mass-Transfer」です。そして配線等を施し、実装します。

ここ数年の進歩により、「Mass-Transfer」の効率はかなり向上しています。しかし、極めて多くのマイクロLEDを実装するため、中には不良のマイクロLEDもあります。仮に99.99%が良品であったとしても、8Kであればサブピクセルは約1億個もありますので、不良のマイクロLEDも10,000個に達します。

マイクロLEDを実装してしまった後に、この不良のマイクロLEDを取り除き、良品を実装すると、膨大な時間とコストがかかってしまいます。それらのコストは、「Mass-Transfer」のコストを上回ります。最終の基板に実装(電気的な配線)をする前に、不良品のマイクロLEDを選別・除去できれば良いことになります。

Tesoro Scientificの技術は、それを可能にするものです。電気的な配線をする前に、マイクロLEDのエレクトロルミネッセンス機能をテストするにはどうすれば良いのでしょうか?単純な方法は、プローブなどを使って、個々のマイクロLEDに電流を流して発光させる方法が考えられます。しかし、この方法で約1億個のマイクロLEDをテストしようとすると、膨大な時間がかかってしまい現実的ではありません。

プローブ等で電気的な接触をせずにマイクロLEDのテストをする技術を同社は開発しています。その原理は同社のホームページに掲載されていますが、マイクロLEDに外部から光を照射して、発光する様子を顕微鏡で拡大し、CCDに記録する方法です。

マイクロLEDは、外部から電流を流し、そのバンドギャップに対応した波長の光を放出する素子です。つまりエレクトロルミネッセンス(EL)という現象を利用しています。しかし、そのバンドギャップのエネルギーよりも大きなエネルギーの光を照射すると、光を放出するフォトルミネッセンス(PL)という現象が観測されることが知られています。同社の技術は、この現象を利用したものです。

同社の技術では、55,000個のマイクロLEDを5秒以下、4インチのウェファーならば5分以下ですべててすとでき、プローブを使う方法と比べると桁違いに高速です。これにより、ウェファー上のどのマイクロLEDが不良であるのかを知ることができ、良品だけを「Mass-Transfer」工程で最終の基板上に移せば問題となる修復すべきマイクロLEDの個数を格段に減らすことができます(*Mass-Transfer工程および実装時の不良も在り得るのでゼロにはならないようです)。

この方法を駆使した同社の「Mass-Transfer」工程では、スループットが200-500M/hr以上とのことです。

Tesoro Scientificとは?

Tesoro Scientific Inc.は、CEOのMr. Francois J. Henleyが2017年に創業した企業で、米国カリフォルニア州のシリコンバレーにあります。前述したようなマイクロLEDの大量生産を可能にする装置を開発しています。

Mr. Francois J. Henleyは、以前はPhoton Dynamicsという企業を創業しました。同氏が発明したLCD flat-panel production test equipment「Voltage Imaging test system」を販売するためです。この企業は1995年にNASDAQに上場し、2008年にOrbotechに買収されました。その技術は、今でもTFT-LCDやOLEDの大量生産に利用されています。

シリコンバレーには、このような技術志向の元気なベンチャー企業がありますね。実績のある創業者なので、今後に注目です。

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マイクロLEDディスプレイの製造方法は着実に進歩している

マイクロLEDディスプレイの製造コストは、まだまだ高いです。現時点ですぐに液晶ディスプレイや有機ELを押しのけてディスプレイの主流になれるほどのコスト競争力はありません。

それでもここ数年の製造技術の進歩は著しく、多くの企業が研究開発の努力を続けていれば、急速に発展していく期待は持てるでしょう。現時点でも、「Mass-Transfer」工程そのものはかなりのところまで来ています。ここで紹介したような画素欠陥を減らして歩留まりを上げるための効率的な方法が開発されていけば、急速に製造コストが下がる可能性が高そうです。

例えば、初期の液晶ディスプレイの時のように、ある程度以下の画素欠陥を許容してしまえば、かなり製品化近づくでしょう。また1か所に2つのマイクロLEDを実装してしまうという方法も提案されています。両方とも不良となる確率は極めて低いからです。「Mass-Transfer」スピードがさらにアップすれば、現実的な解決策となるかもしれません。

ウェファー上でマイクロLEDを作製する技術も向上してくれば、そもそもの不良のマイクロLEDも減少する可能性もありますので、いろいろな技術の発展の相乗効果も期待できそうです。

世界的な景気が悪くなって、多数の企業が開発を中止するような事態にならないことを祈ります。

まとめ

SID2019でのTesoro ScientificによるマイクロLEDディスプレイの製造方法に関する発表について紹介しました。技術が成熟していない段階での、多くの企業によるユニークな提案は、「その手があったか!」的な驚きがあり、非常に面白いです。また数年間にわたって定点観測をしていると、技術の進歩を見ることができ感動的です。

SID2019での注目のトピックについては、こちらの記事「SID2019のまとめ!マイクロLED、有機EL、ミニLEDバックライト」にまとめました。

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