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マイクロLED

SID2019の発表からみるマイクロLEDディスプレイの課題

投稿日:2019年6月4日 更新日:

フランスの調査会社Yole DeveloppmentとKnowMadeの共著により、SID2019で行われたマイクロLEDディスプレイの課題を俯瞰する発表について紹介する。なお本発表論文は、SID2019の約半年前に投稿されたものであり、SID2019で発表された他の研究グループの成果については反映されていない。

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SID2019の発表からみるマイクロLEDディスプレイの課題

マイクロLEDディスプレイは、ソニーが米国ラスベガスで開催された「2012 International CES」において55型でディスプレイを参考展示し、さらにサイネージ等に使用する大型のディスプレイ「CLEDIS」として事業化して以降、サムスンなどの他のメーカーも追随しています。現時点では、極めて大きな業務用が販売されているのみで、一般消費者向けのディスプレイは販売されていません。

AUOなどいくつかのメーカーから、より小型のマイクロディスプレイが試作品として、展示会で公開されています。これらを見ると、少なくとも試作品としては作製できる段階にあることが確認できるため、一般消費者向けのディスプレイとして許容できる製造コストまで下げることができるか否かが最大の課題とされてきました。

SID2019の時点においてもその状況は変わらず、まだ一般消費者向けの製品は販売されていませんが、シャープや京セラなど、これまでマイクロLEDディスプレイの試作品を公開していなかった企業からも展示が行われるなど、参入が増えています。ブイ・テクノロジーのようにマイクロLEDの製造装置を販売するメーカーも出てきており、最大の課題である製造コスト低減が猛烈な勢いで進展していることは間違いないでしょう。

フランスの調査会社Yole DeveloppmentとKnowMadeの発表においても、2013年に33件であったマイクロLEDディスプレイの公開特許件数が増加傾向にあり、2018年には482件であったことが報告されています。

マイクロLEDディスプレイの製造コスト低減の最大の課題は、TransferとAssemblyです。マイクロLEDはウェファー(サファイア基板、シリコン基板など)上で結晶成長させて作り、そこから切り出します。したがって、切り出したマイクロLEDを最終的なバックプレーンとなる基板上に移す必要があり、その工程をTransferと呼んでいます。TransferしたマイクロLEDを正しい位置に配置し、基板に配線して取り付けます。この工程をAssemblyと呼んでいます。

8Kであれば、7,680×4,320=33,177,600画素(ピクセル)ですが、赤・緑・青のサブピクセル毎にそれぞれ別のマイクロLEDを割り当てますので、その個数は3倍の約9,953万個。つまり、約1億個です。これだけ膨大な数のマイクロLEDを正確に並べて配線していくわけですので、如何に大変な工程であるのかよくわかります。

現時点で99.99%~99.999%の歩留まりで、Transfer & Assemblyを行ったという報告例が報告されてきていますので、これらの工程についてはかなり課題解決に向けて進んでいるようです。そのため、むしろその他の課題に注目が集まっており、公開特許においてもそれらの課題解決に関するものが増えています。それらのいくつかについてさらに詳しく紹介します。

マイクロLEDディスプレイの課題:歩留まり向上と修復

一つのウェファーから切り出したマイクロLEDの中でも、発光波長のバラつきなどの不良があります。現状では、これらの不良のマイクロLEDも、Transfer & Assembly後に発光させてみないと不良であることが確認できません。したがって、すべてのマイクロLEDをTransfer & Assemblyし、テストをした後に不良のマイクロLEDを特定し、良品と交換して修復するという大変な作業を行わなければなりません。

8Kディスプレイの場合、約1億個のマイクロLEDの内、99.99%の歩留まりでも10,000個もの不良(画素欠陥)があり、これに膨大なコストがかかります。すでにTransfer & Assemblyよりも難題となっているようです。

「低コストで画素欠陥を修復する技術の開発」、「Assembly前に不良のマイクロLEDを選別する技術の研究開発」、「2倍のマイクロLEDをTransfer & Assemblyする技術の開発」などのアプローチが進められています。特に最後の「2倍のマイクロLED」というものはユニークで現実的です。一つの画素の歩留まりが99.99%であるならば、2つ実装してしまえば、両方とも不良となる確率は格段に低くなるので、修復のコストを大きく下げることができます。

現時点で決定的な技術はまだ確立されていませんが、着実に改善されていくように感じます。

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マイクロLEDディスプレイの課題:小型化と外部量子効率の向上

これまでに展示されている試作品のマイクロLEDのサイズは、数十ミクロン程度のものがほとんどです。このレベルであれば問題ないのですが、小さくするほど現在の技術では効率が低下します。投入された電気エネルギーの内、光に変換されないエネルギーの割合が増加してしまうためです。この割合を、最終的に素子の外部に取り出せる光エネルギーに対して測定したものが外部量子効率です(*光に変換できても外部に取り出せないものもあるということです)。

前述のようにウェファー上でマイクロLEDを作製し、切り出しますので、個々のマイクロLEDが小さいほど多数のマイクロLEDが得られることが分かります。一般消費者向けの製品として許容できる価格にするためには、マイクロLEDのサイズを5ミクロン以下にする必要があるとされています。そのような大きさでは、外部量子効率が1-5%となったという報告があり、課題となっています。

この課題にも取り組んでいる研究グループがあり、ベストデータでは20-25%以上の外部量子効率が報告されています。これを50%まで向上できると考えている研究グループもあり、近い将来に解決できるかもしれません。

また赤色、緑色、青色のマイクロLEDにおいても効率に差があります。特に赤色のマイクロLEDの効率が低く、課題となっています。

まとめ

マイクロLEDディスプレイの課題について紹介しました。ここで紹介しました課題以外にも、HDRでの駆動制御、赤・緑・青のマイクロLEDの発光強度角度分布の調整、量子ドット(QD)での色変換などがあります。正直なところ、製品化・事業化のための課題が山積していますが、直近の数年間の技術の進歩も著しいものがあることも事実です。

振り返ると、高精細のフルカラー液晶ディスプレイの研究開発の歴史も類似したものがあったのかもしれません。最初はあまりの技術的なハードルの高さにひるみますが、まず試作品ができて、技術的に実現可能であることが示されます。そうするとそれを工業的に製造する技術もものすごい勢いで進歩します。いつしか技術は成熟し、「当たり前」のことになってしまいます。

マイクロLEDディスプレイも、もしかしたらそのような長い研究開発の旅を始めたのかもしれません。「人間はリアルにイメージできるものは実現できる」と言われます。多くの企業が研究開発を継続している限りは、実現に向けて進んでいくと期待したいです。

SID2019での注目のトピックについては、こちらの記事「SID2019のまとめ!マイクロLED、有機EL、ミニLEDバックライト」にまとめました。

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