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国立大学運営費交付金の削減が続く!日本の研究開発力は?

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毎年秋にノーベル賞が発表されます。2000年以降は日本人の研究成果に対して受賞することも多く、毎年、多くの人が注目しています。最近の受賞者の多くが指摘することは、大学を中心として最近の基礎研究をする環境の劣化と才能ある若手研究者の不遇で、将来は日本からノーベル賞の受賞者は生まれないのではないかという懸念です。日本の基礎研究を支える大学で何が起こっているのでしょうか?

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国立大学運営費交付金の削減が続く!日本の研究開発力は?

日本の基礎研究の基盤となる大学の内、その中核となる国立大学は、多くの税金が投入されて運営されています。特に大学経営の基盤を支えるための国からの助成金が「運営費交付金」で、これが国立大学法人化以降、前年度比で1%ずつ減額される措置が導入され、まだ減額が続いています。これにより運営費交付金は2004年度の1兆2415億円から2018年度の1兆882億円まで、1533億円も減額されました。

これほどの助成金が減額されたわけですので、大学内では当然のことながら大きな影響が出ています。教職員の給料が一律減額されたことはもちろん、大学から各研究室(教員)に配分される教育・研究活動に当てる予算が減額されました。経営状況が悪い大学では、この予算がゼロというところもあるようです。理工系の研究室では、卒業論文の指導を行うために実験等の研究活動をしなければならず、それにはお金がかかります。学生の視点でみたら、高い授業料を払って研究室に配属されたら、予算が無くて研究ができないなどということもあるわけです。

それだけではありません。さらに大学が教員に部屋の使用料やさまざまな費用を要求することがほとんどです。それを賄うために外部資金を獲得するように命令されますが、獲得した予算の3割り程度を大学へオーバーヘッドとして収めなければなりません。また国関係の予算を獲得した場合は、お金の使い方が厳しく定められていて、例えば前述の部屋の使用料には充てられないこともあります。

財務省は、運営交付金を減額していても、競争的研究資金を増額しているのでそれを獲得すれば問題ないと言います。しかし、競争的研究資金は応募しても必ずしも獲得できるものではなく、大学の経常的な経費に充てるということには相当無理があります。前述のように通常の研究活動をすることさえ難しくなり、さらには博士号取得者のいわゆるポスドクを雇用するような予算を継続的に獲得することも難しくなっています。博士号取得者が、中年になって失業し、アルバイトなどで生活するようになる事例も増えているようです。

日本の研究開発力はこのままでは衰退する一方なのではないでしょうか?

国立大学運営費交付金の削減し外部資金を獲得できる?

国は、米国の有力私立大学などをモデルとして、外部からの資金の獲得を増やし、大学の財源の多様化をするように命令しています。要するに「米国の大学では国からの運営交付金に相当するものの比率がもっと低いのであるから可能だろう」という論理です。これには一理あるような印象もあり、実際、慶応大学などの私立大学ではより少ない国からの助成金で経営していることもあり、説得されてしまいそうになります。しかし、調べてみると日本の国立大学には様々な法規制があり、いきなり米国の有力私立大学と比較するにはあまりにも無理があり過ぎます。

例えば、授業料等の学生納付金。米国の私立大学では高い学生納付金を設定することができ、4年制大学の年額平均は316万円です。有力私立大学ではさらに高額でしょう。国立大学では運営費交付金の次に重要な財源は学生納付金ですが、法律により基準額が定められ、自由に設定することができません。また学生数についても制限があります。国立大学法人化が検討されている際に、「授業料が高騰するのではないか?」という懸念が国民から上がりましたが、国は法律で規制しているので高騰しないと説明したようです。実際、その通りなのですが、大学経営としては、もっとも重要な学生納付金を増やすという手段が封じられているわけです。

また米国の有力私大は巨額の基金を持っているところが多く、ハーバード大学で3兆7000億円もの基金があり、1兆円を超える基金を持つ大学が7校あります。当然のことながらこの資金を運用して収益を上げています。2004年に国立大学法人化されたばかりの日本の国立大学がこのような基金を持っているはずがなく、これから長い時間をかけて基金を積み上げる努力をしなければなりません。

理工系の大学の場合、もっとも外部資金源として頼りにしているのは、国の競争的研究資金です。前述のように獲得資金の3割を大学が間接経費(オーバーヘッド)として手に入れることができます。そのため、億単位の研究プロジェクト資金を獲得できる教員を大学は採用しようとしてます。

このような億単位の予算になるような大型プロジェクトの問題点は、3〜5年間の有期のプロジェクトであることです。通常はプロジェクトリーダーに大学のパーマネントの教授(*定年まで在籍できる正規の教授)がなり、その下に博士号を持った若い研究者が数人置かれ、組織されます。プロジェクトが終了すると、若い研究者は解雇されてしまいます。その間に大学の正規の教員の職を得られれば良いのですが、最近はポストが減少しているためにほとんどの人が正規の教員になれません。それなのに国は博士号取得者の研究員を増やし続け、またそのような研究員を必要とする大型プロジェクトを増やしています。

若い研究員が頑張って素晴らしい研究成果を上げ、さらにプロジェクトが続くようなことになると、中年ぐらいになってから解雇されるような事態となり、転職も難しくなります。最近はこのようなポスドクの苦境を、理工系の学生が身近に見る機会が増えたため、博士課程に進学する学生が減少しています。このような状況を、ノーベル賞受賞者が憂うわけです。

現在の状況では、理工系の大学は、大型プロジェクト関連の競争的研究資金の獲得に努力せざるを得ず、このような不幸な状況はしばらく続くでしょう。

実は、国がモデルにしている米国の有力私立大学でも、連邦政府の補助・委託金は、全米科学財団、米国衛生研究所などの政府機関を経由して大学へ配分されています。この予算を大学が獲得すると、50%程度を間接経費として大学がいろいろな目的で使えます。場合によっては教職員の人件費に充てることもできます。ここが日本の競争的研究資金と大きく異なる点で、日本の場合は正規の教職員の人件費は原則大学負担です。そのため、米国では連邦政府の補助・委託金を大学が獲得するほど、大学の経常的な経費に充てることができ、経営が改善します。日本ももっと自由度を高くする必要があるでしょう。


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国立大学運営費交付金の削減し外部資金を獲得するには?

国の指導では、国立大学は民間企業等からの共同研究費をもっと獲得するように促されます。実際、そのような努力を理工系の国立大学が続けているのですが、一般に日本企業は欧米の企業よりも大学に共同研究費を払いません。米国の私立大学でも企業からの補助・委託金は収入の4.6%に過ぎないことからも、日本で大学が企業からの研究費で大きく財務内容を改善することは困難でしょう。

日本の理工系の大学では、実験等を学生が行います。授業料を払って大学に来ているため、学ぶ権利があるのですが、研究費がないために、その獲得のために教員と協力して研究を進めることになります。企業や国の競争的研究資金を獲得すると、資金元と契約をし、何らかの研究行為を行う義務が発生します。その内容と量にもよるのですが、実働を担う学生は、契約上はその義務を負っていないことが多く、客観的に見ればグレーゾーンでしょう。

極端な話、学生は授業料を払う立場ですので、「大学に来ない」という選択も有り得ます(*卒業はできませんが・・・)。外部から研究費を獲得し、研究をする義務を大学教授が負った後に、学生が不登校になったり、アルバイトが忙しくてあまり実験などをやらなくなった途端に破綻します。法律的にどの程度まで学生に実験などをやらせるべきなのか疑問です。このようないろいろな制度が整っていない現場で、教員がさまざまな責任を負わされて活動しているのが実態です。単純に「外部資金を獲得しろ!」と号令をかけても解決するわけではないでしょう。

米国の私立大学をモデルとし、国立大学運営費交付金を削減するのであれば、日本の国立大学を縛っているいろいろな規制を緩和し、経営の自由度を上げる必要があるでしょう。授業料と学生数を上げ、競争的研究資金の間接経費比率を増やし、その使い道も柔軟にすべきです。

まとめ

国立大学運営費交付金の削減による大学の苦境を紹介しました。大学の経営を改善するための法整備と外部資金獲得額の増加スピードに比べて、運営費交付金の削減スピードが早すぎる感は否めません。大学改革が必要なことは分かりますが、荒廃させてしまっては問題が深刻になります。社会が大学に求めるものも多様で、規模も大きいため、難しい問題ですね。

参考文献:日本経済新聞電子版2018年9月3日の記事 「国立大学の財源確保、米国モデルは非現実的 大崎仁・元文部省高等教育局長、元文化庁長官」

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