有機ELが大型テレビやスマホに搭載され、普及しています。スマホ内では、ガラス基板の代替としてポリマーフィルムによるフレキシブル基板が使用されているものがあります。フレキシブル基板の場合、TFTのプロセス温度により耐熱性の要求が決まるため、より低い温度でのTFTの製造が望まれます。湿式プロセスによる低温でのプロセスが可能な有機TFTについて解説します。
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有機TFTとは?
TFTは、有機ELや液晶のようなドットマトリックス型のディスプレイにおいて、高精細な動画表示をするために必要となるトランジスタです。画素ごとにTFTの回路を形成し、制御することで、高精細な動画表示が可能となります。
液晶ディスプレイでは、主にアモルファスシリコン(a-Si)や低温多結晶シリコン(LTPS)などのSi系TFT、In-Ga-Zn-O(IGZO)などの金属酸化物半導体を用いた酸化物TFTが使用されています。有機ELでは、LTPSと酸化物TFTが用いられています。
これらとは別に有機TFTの研究開発が続けられています。有機TFTは、湿式のプロセスにより100~150℃作製できることが最大の魅力です。前述のシリコンを用いる方法では300〜500℃程度のプロセス温度が必要で、フレキシブル基板材料の選択肢が非常に限られるのに対し、有機TFTではより多くのプラスチックから適当なものを選ぶことができます。
現状では、電子移動度が10cm2/Vsが報告され始めた段階で、比較的低いこと、耐久性がまだ十分ではないことが課題です。
有機TFTのフレキシブルLEDディスプレイが登場
東大発のベンチャー企業である株式会社オルガノサーキットから、フレキシブルLEDディスプレイが作製されました。フレキシブル基板としてPENフィルムを用い、印刷プロセスで有機TFTを形成しています。この有機TFTは、東京大学の竹谷純一教授の研究室で開発したものです。電子移動度は10cm2/Vsとのことです。
有機TFTのフレキシブルLEDディスプレイの製品は珍しく、今後、実績と信頼を積み重ねていけるかどうかがまずはポイントでしょう。画質については、さらに向上するのではないかと期待されます。
有機TFTのプリンテッドエレクトロニクス:山形大学
有機TFTは、山形大学の時任静士教授の研究室・有機エレクトロニクス研究センターでも研究開発が続けられています。
有機のトランジスタは印刷によりフィルムに形成できるところが特徴で、ディスプレイに限らず、ウエアラブルな種々のセンサー用回路が形成されています。これは「プリンテッドエレクトロニクス」と呼ばれる分野で、今後の発展が期待されています。技術的には身体に貼り付けられるいろいろな回路を作ることができますが、何の用途でどこで利用していくのかをまだ模索しているような段階のようです。現状では、ウエアラブルデバイスとしてはApple Watchのようなスマートウォッチが普及している段階ですので、それ以外のウエアラブルデバイスはこれからです。
まとめ
有機TFTの特徴と現状・今後の可能性について解説しました。ディスプレイのみでなく、ウエアラブルデバイスなどの各種センサーとしての展開も期待されています。
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